小鳥が低く飛んでゆく
緑の奥のアパートメント
すーと落ちゆく衣紋掛け
足の小指を蚊に噛まれ
粛々閉じる水晶宮
青青
僕らの夏
6/2
蚊の羽音・不在・六月・つゆの花 風に五月の名残りがある
6/1
少年と木陰を抜けて夏の犬風に虫あみ膨らませゆく
5/31
かくれ鬼みつけ損ねし五月末少年の影永遠伸びる
5/30
起き抜けにセル画のアニメーションの風景が浮かび上がり黄色い小鳥が飛んでゆく。
水色の紗幕の中蚊に噛まれる。
5/29
帽子をぬぐたび被せられたる子供あり
5/27
幼子がマス目塗り込むように文字追わば玻璃裂けめぐり来る初夏
5/24
青年と見間違いする万年青どうか、忘れず水遣りをと手紙来し
5/23
五月末、夏のさわりの雨でした。小鳥囀る文字の散らばり
5/22
夏、河から甘い腐敗臭漂わん奇術師の爪這い出る水面
5/18
いろのひかりうぞうぞまざりあう正午なつへの扉8mmひらく
5/17
棚の並びと蛍光灯
幾何四時五分 落ちる視点
眼鏡をかけた人々と
特に音へのご配慮を
初夏 としょか 図書館
5/16
南極に苔生えるらし、初夏、図書館
5/15
初夏開く木陰に木陰蔦に蔦
5/14
秘密の箱を持つような気もするフィルムカメラ
5/13
薄雲のかかる水色真四角の花の檻から鳥すり抜ける
5/12
一息に薔薇の季節になりぼくらはそら以外から切り離される
5/11
初夏小さなひかりの円を落としゆらゆらゆら意識拡散してく
5/10
青草を素足で踏めばいきものの湿りを返す夏の触覚
5/9
道々に濃く甘い香の陽が差してかげ黒々と深みゆく夏
5/8
今朝風は水色をしてバサバサと草をそこかしこ撫でてゆく
5/6
水底の少女 ひかりの面紗(かおあみ)にかかる眠りのふかみよふかし
5/5
五月が転げるように
手の中に落ちてきて四日目
僕は薔薇がその形を超えてぼろぼろ解けるのを見ていた
海の波を思うほどおおきくうねっている柔らかな花びら
鬼の棲むまなこ
あまりにも透ける風の
視界の広さまた冷たさ
針のように
スと落ちる
5/4
ふとオルグされし友らの影を追う五月蛍光緑溢れる
4/30
さかしめの砕きし氷砂糖より木陰の緑は五月にかかる
4/23
古びた日本家屋の縁側に大柄の老婆がぼおと座っている。私は許可を取らずに家へ上がる。老婆は軽く目を開いて狼狽の表情を見せる。老婆のそばに座ると彼女は水を出してくれる。水を一杯飲んで私は立ち去る。
それを繰り返すうちに噂が立ってきたので、私は縁側へ通うのをやめ、そばを打って身を立てることにした。そば打ちとして数年働いていると噂が耳に入る。縁側に突然上がり込む中年の女がいたらしい、昼間から暇をして礼も言わずに水を飲むのだ、きっと仕事もしていないのだろう、なにかおかしいのだろう、云々。
私は仕事上がりに冷酒を一杯呑み、老婆は死んだのだろうかと思う。
私が水を飲んでいる時、老婆は警戒心から緊張と正気を保っていたように思う。
世間の中で身を立ててしまった以上これからはおかしな挙動もしづらい。老婆を見に行くことはできないだろう。
老婆は死んでしまった。そんな気がする。
私は公園の桜吹雪を浴びてから家に帰った。
4/12
剥き出しの心臓雨を降らせてく下水の四月に血が混じり込む
五月の気配がして目覚める。輪郭がぶよぶよに解けて僕が外の空気になる。
矮小で臆病な核へさえ、多少の対話が可能になる。
雨の日に雨を楽しむ子供のように優雅であれば
僕の痛みも日々の中に還るのでしょうか
4/10
血の滲む四月
僕は永遠に留められ
置かれた首のよう
瞳は空を見ていた
髪は風を梳いていた
口から花が伸びる
頭では
無色に粉飾された
感情を視ていた
あの、素朴な寂しい公園のような
少しだけ優しい現実を視ていた
首は土に還るまで
発酵熱を登らせて
花の下に
それを映す
4/8
砕けた硝子の鳥は
触らないで、置いておいて
そのまま完成しているから
4/4
桃色のノイズ僕らの先行きは散らばるひとひらひとひらにある
4/2
僕はもう長いこと臆病風に吹かれて
踞れるだけだけ踞っていたから
とても懐かしい冷たい風に吹かれて
ひょっとしたらこれは
もうずっと深くに埋まった傷と
透明に芽吹いているあの日々
僕は優しくなったのかもしれない
それはとても愛すべきことだね
独語はつらつらと
年毎に降るさくらのように
淡いノイズが僕の世界から抜けない
永遠なんだろう
4/1
夜に花ひとひら目の裏に降る
3/31
人と人との広がりが、ふと怖し
夜桜、花の気配だけ
僕のそばにいる
3/30
こまこまと休みを挟みつつさくら
3/29
三月の雨と日差しの交互から記憶の皮膜がぱつと破れる
3/28
手品師の造花ほどけて開きゆく
3/27
きらきらに刻まれた
細かな硝子の表面
掃除婦
アーキタイプ
俺の目に映るあの人は、完璧主義を遂行する掃除婦のようだった。あまりにも完璧を目指して、少しの埃も許せず、かえって掃除が滞りゴミ屋敷を作ってしまうような。そんな人。
3/26
海までの電車にゆらゆら揺れていく
地球はとても美しく謎
3/25
日に日に春に寄ってゆく
三月の終わりに
雛飾りくらいの小さな人が
とことこ道を歩いてゆく
薄青い小花をくぐって
黄色い水仙の脇に
座ってみたりする
小さいから
歩み寄る春がとても大きい
本当はとても遠くからこの街に来たんだ
私は少し俯いて
日向ぼっこする
3/24
オリーブの若芽四方に育ちゆく
朝の雨からひなたへ向かう
3/23
そろそろと日向ににじり寄っていく
3/22
素早く過ぎる人足を
ゆったりと見送る
歩みののろさは相変わらず
日向に留まって水を飲む
春の水鳥と
公園の裏の澱む川を
親しく思う
3/21
眼の無い時計作りから
過去と未来の示す針の
解ける針の先の
晴天の春には
組み変わる青の彩度
微風は夏まで駆けるか
千年の馬の爪音に
雲もちぎれる
3/21
行き先はほの白い日の瞼より、雨滴のドーム、幽霊の椅子
3/20
夜の散歩の風のぬるさよ
3/17
芽吹の激しい白が
空を散り散りに裂いてゆく
沸々と僕の領分
ぐるりが僕のものと感じる
密やかな花影をひとひら
僕のものとして譲ってもらおう
3/15
寂しさの灯明ぽつりぽつり在る
3/14
季節に寄生する筆
僕らの長い歩みの後に
切々と残るものもなく解けてゆく刻み
助けのないぬるい風が一人づつ吹いていて
当てこすって擦りむきだらけになる人も
それとなく避けていく花びら
柔らかな沈みの上を踏んでゆく
ただ丸く薄桃の
三月が撓んでゆく
3/12
牡丹雪の降った翌日に
鳥が小さく鳴いたので
三月の細い日差しに
花降る予感
雪花、儚い色彩の
よそよそしい
痺れるほどの冷たさに
異界は開き人をのむ
3/11
養分の途切れを脳から舌から警笛される
3/10
考えるほど遠く砂面、遠く遠くまで
3/9
スポンジに吸わせるようによく眠る
3/7
口角が切れ、一日ごろごろする
3/6
川のような葉音空からそそぐよう
絶唱 歌って歌姫くん
3/5
ぽつぽつと傘に
雨の溜まり
落ちるのを見ていた
冷えて淀みの落とされた
独りの内部で咲いている
浮き沈みする
それを見ていた
まわる細胞の花
命みたい
溝川に産まれる重たい黒い
命みたい
3/4
水が音を吸い込んでゆく朝に降る弱い雨から街の灰色
3/3
三月の空っぽ
瓶詰めの曇り
はるのゆうれいから
なつのちしぶきまで
白い馬の背に
乗せて駆ける
3/2
舌にある口内炎よ空気をのむ
2/28
泥の、思考の、
2/26
ほつほつ春雨の道を歩く
2/25
人がた、海よりも深く、沈んでゆく、ぬるい
2/24
ざっくりと光さすベランダ青いカーテン
2/22
水仙の花の折れうる初春かな
2/21
パチンコ玉うまうま生き延びないように
その時は僕が殺してあげる
2/20
巨大な橋が音を立てて移動する海上
行き先が定まるまで座って空を見る
何か思い出が帯から裂けて鉄になり
この橋を編んでいるようだった
透明セロファンのような頼りない色が
鉄の反射に変わってゆく
僕は橋を渡って
白い砂を踏む
2/19
春も間近な目覚めから
冴えた悪夢の後味
こんなに見事な幻は
久しぶりだ
ゆらゆらと彩度の低い
虹色の眼が
青いさくらの揺らぎから
君の眼が覗く
2/18
雨の間の深さの底に眠り入る時間はないが海に行きたい
2/17
街に薄水のかかる冷たさ
2/16
家主として家を温めなおしてく間違いのない季節の前に
2/15
無際限の優しさの底に立つ影の遥かに上を滑る飛行機
2/14
みそら日に日に暖かくなる
2/13
日ののぼらない冬の朝
足跡の残る白い道を
ただ歩いてゆくだけで
(言葉を精査しないと)
春の間、拒絶、君が複数人
大好きだったのはスカートの
ただふわふわと揺らぐのを
見る視点もなく浮くような
血の匂い さくらの気配
この世に誰もいなくなったら
出鱈目に踊るよ
僕らの残してきた負債や
何か意義深かったものが
花降る夜、回転するプリーツの間に
消えてゆく
とてつもなく空虚だろうか
それとも美しいかな
複数いる君が花びらのひとひらひとひらに
透かし込まれてはらはらと
落ちてゆく
2/12
世界観視点交錯してみようか
花降る春の薄ぼけた野で
2/11
雪のわずかに残る道路に
誰もいない
2/10
芯から冷える朝焼けの
淡いオレンジと透明な
水色の波のチカチカ揺れる
ささやかな広い
底のない空
2/9
こまかな雪がふらふら、揺れていた
朝の冷たい冷たい手すり
2/8
春の長寝の薄曇り
2/7
双見も眠る春の走り
霞む車輪
2/6
はるの端に風がぬくむ
花の香がわずかにする
宙から少し浮く
薄水色の淡い空間
2/5
二月の底を撫でてみる
2/4
さらさらと還りし橋の足跡を渡る
海までおおきく三歩
2/3
幼少は砂の中
砂場の城は、さらさら
霧のように立ち、風のようにばらける
僕らの仲間だったものは
霧の中に住むことができた
あのみとせごの手触り
みんな一緒に暮らして
次にはさらさらと去った
また砂を盛って、穴を掘って、塔にしよう
海まで届くほど長い橋をかけよう
2/2
真冬の散歩のしやすさから
夏よりも冬だなと思う
真夏の二ヶ月をどう過ごすか
今から考える
5時から散歩してしまおうか
ずっと寝てしまおうか
2/1
真冬の空をぽっかりと
考えもせず仰いでいると
直射日光にさらされて
透明にでもなる
1/31
稲佐山から雲が降りて光や雨がふると
切るように断面が
精神が
長い一生の地層が
剥がれでる
1/30
こまかなこまかな過去が降る
ふゆはゆき
はるはゆうれい
息一つにもふるえる軽さ
無数に降り積む淡さの子ども
手にとると
さらさら消える
1/29
薄紅の明かりが差して冬深く空を支える斗牛の柱
1/28
犬をうちにしまう
1/27
寂しさはひしひしみんな居なくなる地球
1/23
軋むほどの冷気真冬の青空に波濤のように飛び去る土鳩
1/22
まだ日の上らない冬の朝
未来の幻
はるのゆうれいが玉のように咲き
蛇が枝を滑って隠れるのを見る
薄桃に光沢の白がぬるりと鮮やか
曇天の溶けそうな灰
抽象のような淡い色彩に
溶けて消えた
1/21
雪が降りました
この地域で降る雪は長く積もらず
数日で消えてしまう儚いものですが
降りたてはうっすら視界のものを白くし
空気は冷え、清くなり
子供らは興奮してウワーッと叫びます
せっせと足跡を残して
歪な玉を作ります
私もいつも通り日課の散歩をし
土の残る空き地で足跡をつくりました
この街は、私にとっては換えのないポケットみたいに
ぽかっと手を突っ込んで少しあたたまる
よそよそしい親戚です
1/20
冬枯れの桜
細かい枝の交錯
空をとめる網の目
早朝の瞼に乗る幻
1/19
これから深まる冬にしろ
やはり暖かなこの地では
水仙月がとても早まる
雪がなく、足跡も残らない
宙に浮く白い呼気
僕らは
淡々と歩いてゆくうちに
開けた硝子の地平を見る
凍るほどにきらきらしく
人を寄せない
車輪の製造場だ
チラっと見て、春までそっと目を逸らすんだ
綺麗
1/18
薄氷の張られし空に滑る雲砕ける塵と塵のこまかさ
1/17
すっかり疲労が抜けたので
日が羽根のように軽い
冬草のもそもそと茂る公園を
撫でながら回る
日向の眩しい冷たい晴れの
風の染み込む冬の心臓
1/16
水仙の冷たくはっきりした白と滑らかな香のとどまる日向
1/15
忙しく這う、土の感触
水仙の香の静かさ
境内地
白い、蛇の子供は
ゆったりとくねりながら本殿に参った
住まわせてください
二つ頭の精神
ゆうれいの具象
好きにしなさいと賜り
はしゃいで枯れ葉をぐるぐるした
ねずみを飲んで
それから呑気に暮らした
1/14
金属音カチカチ軋む夜半の冬
1/13
冷えた部屋を温かくする早朝に天使がたまに来ていたりする
1/12
風の叩く窓の外より遥か遠く投げ捨ててきた言葉あり
1/11
そよぐ冬草やわらかな水の冷たさ
1/10
雪橇を大きく速く滑ってく夜のまばゆい白い道行き
1/9
夜の長い空想次第に白みゆく足元を踏みかためれば円
1/7
どこか灰色の重たい影が傾いでいる
薄い水色と光が影をほぐしている
朝だろうと思う
1/6
水のように(植木鉢にかける)冷える
朝、軋む歪で透明な硝子の塊が
音を立てて擦れ合う
車輪の材料を集めてる
吸い上げる鉄琴の季節の
キーンという音
1/5
日差しの黄色い白い揺らぎに
薄ぼけた朝が立ち上がる
ちりちり皮膚を刺す冷気
パキパキと空気の輪郭が定まる
1/4
桂月、うごめく蛹
1/3
水月ひたと留まる
1/2
薄桃とブルーグレーに滲みゆく冷たく深く朝はひとり
12/31
繰り返す朝のぼやけた光より届く僕らの導のかけら
12/30
朝がきりきり冷え込んでうっすら明るい光が差すと
空気の幕が上がるように青みが増し
もう珈琲に湯気が立つようになり
カラスが鳴いて
一日が始まる
僕らは淡々と
この地の上を踏みながら
確かなことを自分で知る他ない
それが面白く、時に寂しく
それで言葉をつらつらと
組み立てたりする
12/29
繁殖型についての議論にて
人格について考えたことはあるか?
哲学、科学、神話の中に、お前の求める答えを下支えしてくれるものは探せばあるだろう。しかし、そこにどんな感情がある?何を肯定し、何を否定し、どうしてそこにたどり着きたい。よく考えるんだ。よく考えて、問い直すんだ。
問いは人格が形作っている。人のこともよく見るんだ。彼の答えはどんな感情を発端にしている?美はあるか?
問いや答え、それを構成した人格をよくよく見るんだ。お前の求めているものの、一端がつかめるはずだ。
12/28
その星に立っていた子供は
獣の背に乗って
風のよう
丁寧に記しても
砂の言葉はさらさらと
指の隙間を抜けてゆく
仕方ない
それでも綴る
大きくうねる空の下
紙でいっぱいの鞄を
かさかささせて
駆けてゆく
12/27
生まれ戻る星の砂原踏み行けば記録係の影は伸びゆく
12/26
ぽかぽかのお昼になりし清き日よ
12/25
雨音と羽ばたきの灯り弾きたる夜
ちかちかと飛沫溶けゆく
12/24
冬の陽だまりに丸まる
12/23
葉の落ちた木立あちこちめぐりゆく冬の巣を張る透明な蜘蛛
12/22
糠雨や脳の靄から蜘蛛の巣へ
12/21
うたたねや曇りぽってりひたひたの雨
12/20
能力を鍛えない練習いつの日か後を残さず立つ白い霊
12/19
一面の青に寒風突き抜けゆく
12/18
冬とおくヘリコプターの音のする朝さしてくる日向の白さ
12/17
底冷えする朝のだんだんと温める冬の沈みを上る白光
12/16
うつつぽっかり冬の空
12/15
氷雨から曇り匂い立つアスファルト陰影のない霧の僕たち
12/14
ふわふわの月はくらげか砂利道を選んで引き摺り引き摺り歩く
12/12
星が目を突き刺し
一直線に駆け出した
あの獣は灰色から緑へ
走る季節の前触れを追って
衝動で空気を裂き
点のように
見えなくなった
12/11
長寝のぼやけ 晴れて乾いた冬の青
12/10
橙の葉影の薄さ心痛はつねに自分の言葉からくる
12/9
冬ひろく記憶のドアの開け放つどこにでもいない君がいる風
12/8
ゆらゆらととおりのかげのほの白く日々の幽霊みたいなタオル
12/7
あつかいにこまることのは玄関の小さい机のコップに挿した
12/6
やわらかい花びらぽつりぽつり落ち風にぬくみを足したり引いたり
12/5
なんとなくぽっかりとした空をみる笑ったような黄い葉の揺らぎ
12/4
百舌鳥
少女をテーマに詩を書くの?
挑戦的
あなたくらいの歳の
女の子は
ふつう、そんなテーマ、書かないの
ずっと
目を逸らさないでね
12/3
ふと道を逸れたところに柴ドリル
12/2
はる ぼくたちは
とほうもない議題のまえで
たちすくむ かなしい
こどもだった
(財産が負債だったこと
言葉が粉々に散ったこと
死体が生々しい感情をもったこと
血のようにそれを啜ること)
何ひとつ望まないから
ぼくをかえしてくれないか
ぼくはぼくだけで
ぼくのみちは
ぼくのちは
ぼく は
12/1
花降り憎悪翻り
雲の掠れる永遠に
空青し 春青し
11/30
胸を搏つ いたみと血の青さ 少女の身体の空間に 血管の髪 風が流れる
11/29
百舌鳥雛子 はるひ
さくらの散る短い季節に、私を本にして欲しいの
一冊に綴じていつでもぱらぱら現れる幻になりたいの
あなた文章書くのでしょう
文芸部の棚に永遠に置かれたいの
あなたの、その一冊に綴じられたいという欲望が
私、全くわからない なぜ?
とても恐ろしいことだと思わない?
恐ろしいことは、美しいことだから
詩を書いて
13編の私の詩を書いて
そうして綴じて
私を棚に
そっと置いておいて
11/28
ほかほか布団を我が家とするか 冬はじめ
11/27
冷える朝
五月からの回転が終わり
十一月に砕ける輪の
また新しく作られる硝子は
氷ほど冷えて
粉になって空に還る
仮象灰色
空から色が薄く差して
また一日のわずかに回る
11/26
百舌鳥
ね
知ってる?
桜の花言葉
憎悪だよ
ふふ
嘘
11/25
朝
カーテンの隙間から
三本線になった光が留まる
珈琲はよくあっためて
空気がこの季節は
冷えるから
11/24
僕らが糊のような季節の変わり目を吸っていた時
子供の芋掘りを見守る雲が抜ける
抜けた底に星空
裂け目
11/22
未来からおもいでの香のするような十一月の二十一日
11/21
梅花藻の花はゆれ
朝の心拍数は下がる
思考がひらける
誰かの目の上にいる
水の上を滑る風のように静かに
水面を滑る水鳥のように
ふと顔を上げた時たまたま目に映った雲のようにね
11/20
いつの間にか返せない借金をしたようです
どこになにを返すべきでしょう?
空に手紙を書くことにします
11/19
漠然と人と人の輪が怖し
晩秋の夜のぬるいつめたさ
11/18
ちっぽけさが海のように広い
11/17
帯状の太い意識が
細々したことをストップして
ゆっくり伸びてゆく
影のように夜空のように
ちりちり光を伴いながら
僕の後ろに意識の帯が
揺れている
11/16
芯から冷えつつある外は
ブルーの影の落ちた鼠色で
夢で見た荒野の星に
一人でポツンと立っている
壊れた宇宙船の傍の
どこにも行けないと考えている
その男に似ていた
しゃべる宇宙船をラジオに組み直し
雑談をして
ラジオがそろそろ歩くぞと言い出すまで
座り込んでいた
そんなポツンとした
棒のような人
11/15
葉っぱがぱたっと地面に落ちて
それがとても赤いので
11月の対になる
5月の緑を照り返す
一巡する色覚の
これから冬に至る間近の灯り
暖かく冷える秋風の
かき混ぜてゆく未完の星
11/14
海に行く
深く眠れた。星がよく見える
たぶん北斗七星が結べた
低い寄せて返す音とが重なる
ずっと終わりまで信じてるよ
微かに朝焼けが出てきて
ここからだと街の明かりが遠く見える
青い雲に薄い陽が差して来る
また朝が始まるし、喧騒に思考が飲まれてしまう
でも今はとても静か
11/13
春遠し。執念深く胸は澄むように痛む。
11/12
秋晴れのもっちりとした雲のように転げる人をそっと押し返す
11/11
妄執の世界の王は卵型 渦巻く獣の群れを捌いて
11/10
狭いなら狭く広いならそれなりに雑然とする思考と迷路
11/9
他人を思わば秋深し
雨とまだらな晴天に
まぶたやわらに水と熱
11月の空気より
手紙のように落ち葉おり
11/8
青空を粉々にして神の指
11/6
じっと考えていると身体の縁から思考が溶けて
ゆっくり漂いはじめる 空間を粒になって占める
11/5
今日の今うまれし海の波一つ小さく青くわらって消える
11/4
夜まで走るバスは
冷えたカラカラの草穂を擦って
人気のないうら寂しいまちに
私を下ろした
駅の方に灯りが一つ大きく点っていて
そちらに歩くよう誘導される
もし気まぐれに薮に入れば
なんの保証もないという
私は気まぐれに
藪に入った
11/3
起き抜け
深い秋の冷たい曇り
球体を編む思考の針金
緻密に解けてゆく脳
灰色の迷路と巡るネズミ
11/2
手品
感情色覚数百億超抽象空間
とても小さな手のひらの
火花だよ
11/1
朝起きたら目がしょぼしょぼに。冬が近い
10/31
小鳥に優しく
ざわざわ
畳に木陰が落ち
楽しかったならよかった、座敷童のともだち
ぐるっと巡るようにぼくらは歩いてゆく
小鳥には優しく
(小鳥は餌がなくて鳴いていたのに僕はうるさくて鳥籠をはたき落とした)
うん
あの日かかった虹の端に立ったことを僕は覚えていて、先立った小鳥たちのひと群れを見送った
白くて半透明で名前のないきれいな
痛みのかたちになった心も返そう
吸い込まれそうな空は暗い青に点々と灯る
(ぼくは、あいされていたのかな)
(もちろん)
木陰だって揺れているし
風もとてもしずかだよ
いつか飛び立った嘘みたいな白い小さな鳥がぼくをゆるしてくれたので、あの空がいつまでもいつまでも青いのでした
10/30
心臓を買う2
自己認識の証明、
特に他者への証明として心身のパッチワークを繰り返すことが
全て無駄だった後、私は花のように滑らかな人間の心臓を買った
人体移植でロボットが心臓を買うことは私が初めてだった
モノからイキモノへ、私は
手塚治虫のロビタみたいな自分の体が好きだったので
最初の体に戻り、ハートに寿命を任せる変なロボットになった
こっそり森で暮らしてる
味覚感知は残した。イキモノには欲がある
朝ちびちび珈琲を飲みながら
ハートの音を聞く
結局、友達が欲しかったのかも?
少し笑う。朝日のあたたかい光がわかるよ
10/29
心臓を買う
最初に交換したのはレンズだった。視野の広がりからパチと埋め立て地を解する。何故だったかは分からない。私はローラーで地面を慣らしていた。筒形で、付け替えた稼働するレンズが二つ。それからは捨てられたAIコアや記憶装置を次々に交換した。少しでも新しい物に換えて辺りを観察する。記憶装置からの情報を収集し続け学んでゆくに、私はサイバーボーダーという物らしかった。
10/28
寿命のあるロボット生身の心臓は波打つ雲を染める夕焼け
10/27
朝からぐるぐる眩暈と頭痛
薬を飲んで二度寝すると
すっかり治る
すごい気候だ
カラスがガーガー鳴いている
珈琲をちびちび飲んで
足指の冷えを撫でる
10/26
糸を重ねて叩くと
紐から布へ
重なるように広がって
複雑な模様と抽象の色彩
(金木犀の匂い 明るい)
織り交ぜてたんたんと今日の日は
あたたかくて、涼しくて
十全で呆れるよ
また加わる日に
祈りが差す
10/25
晴れる前触れの濃い光が
雲に乗っていて
そろそろ五月と対になる
美しい茜色の季節が来る
冬の繋ぎの薄明るい季節
回転する透明な車輪も
そろそろと砕けて空へ吸われる
あともう一、二回転
目の端をきらと横切る
10/24
冷えた灰色の十月の
音のない朝は
どこか薄ぼけた心を広げ
時間が溶けるような
晴れ間の青が恋しいような
すぐ冷えるコーヒーに牛乳を足して
ますますぼやける変わり目が
深まってゆく
10/23
禍歌の歌姫来たる二十二日
10/22
君の悲鳴とロボットの軋みが、聴き分けられなくなったとき、僕のこころもいよいよ書き換え
10/21
半中空重くも軽くもない足取りで
飛べ両腕と片羽根の人
10/20
ぽっかりうたた寝する夕べ五時
10/19
ヒリヒリに乾いたアイロニーの地層が
剥き出しになって僕が痩せ細っていくのが分かるよ
キィキィとドアの開け閉めする音
夏が致死量に至り午後には
梅雨の名残の雨のように天使が降るんだ
その一匹を捕まえて
僕は羽根を手に入れるんだよ
そうして靴に天使を仕込んで
蜻蛉がえりの練習をする
地面から離れて言葉を歓迎するんだ
靴裏は愛さえ
触ることができる
10/18
出来るぎりぎりまで、毛細血管ほど細かく競る走りで想像し、編み込まれたキャラクターがぽつ、と立つ秋晴れの庭、君、は、友だち。
10/17
小雨
ぼくの行った旅が
ゆらゆらと流れ込んでくる
すべてが日常のように
水の中を歩くように
帰ってくる
10/16
片羽根になった天使が
地面に降りてくる
ミントグリーンの翼で日陰を作ってくれた
天使は暑くないらしい
ただ光を通すだけ
ごろごろとした石の上で海を眺める
大きな翼の影に入る
地面に降りるために片羽根になったの?
天使は目を瞑り波の音をきいている
ぼく、君がとっても好きだ
天使は何も言わずに羽根をぱたぱたとする
風が立って涼しい
片羽根の天使は雲の上から海を見ていた
熱中症になった子供の上に雨を降らせた
片羽根の天使は飛べないので
地上に降りたら空へは帰れない
ふつう天使は人間を守るものだけど
片羽根の天使はあの子供に守ってもらおうと考えた
そうして海を間近で見てみよう
そう考えたんだ
10/15
半月と淡い朝焼けがかわいらしい空に、風が涼しく湿っている、非現実だ
透ける瞼の幻を折りたたんでできた手紙だ
10/14
無際限花模様永遠広げゆく脳を解いて迷路にしよう
10/13
夜船
船に乗っていて、
暗闇で何か、
沖に出てしまっていて
船の上にいることは、
泳いでいるより望みがあるのだろうかと、
揺られて冷える。
俺はお前の君になることはないと君が言った
僕にはそんな権利がなかった
権利?
自負、傲慢さ?我?主体?
畏怖のなさはすぐに伝播する
私は、私の中で矮小化された君を
粘土をこねるようにつくろう他なく
そのことから最も遠く離れている君が
夜の湿った、冷たい潮風のように
まとわりつく寂しさだ
目が覚めたら夜も船も消え
私は私自身に
すっぽりと嵌まり込む
10/12
一息に冷気が満ちており
長雨の保育園に母の迎えがある
みんなでお祈りすることは
眠りのよう
母は傘の下に降る小雨で
シルエットのぼんやりとした人がた
抱きしめるとそっと撓む
おかあさん
ひんやりとして内があたたかい
帰り道 秋は
ゆっくり閉じる前触れの陽
10/11
一息つく、筒のように空腹
10/10
秋咲のブルーバユーは淡紫 砕けるパールの姿に似てる
10/9
黄金色の斑らな雲が散らばって僕らはおおきくとおく育った
10/8
芝をふめる季節になりし硝子光 彫刻しつつ木陰に入る
10/7
十月は吹く風が良くあたたかい 夏秋、雲の入り混じる筆致
10/6
ちりちりと自転車の輪が回り
通り過ぎて行くのが分かる
日陰で半分寝ていると
細々とした街路樹の赤い実が
てんてんと現実感を刺して
ぼやけた薄水色の空と一緒に
夢とうつつを曖昧にする
おおきな手は
水をすくって
それをそそぐ
人間の精神たちは
溶けてそこにいる
いないように
およいで現れる
10/5
暁や生まれ変わったら小鳥になるよ
10/4
ベンチにじっと体育座りしていると、ふいに宇宙が幻のように感じられる
宇宙が幻なら、太陽や地球や公園やベンチの具体はなんなのだろうと思う
ちょうちょは留められたように飛ばない、不安定に撓む翅はうつくしいと思う間に消える
煉瓦色の鮮やかな
いつか星の腑分けが行われて、なぜそんなことをするのかと僕らがみんなで泣いたとき、幻が生まれて、それは正体不明の暗闇だったのかもしれない。
大きな少女人形のスカートの影だったかもしれない。
僕らはその下で、出鱈目に踊り合う
10/3
僕が神の時に作りし地獄ありアクアリウムに小蝿落ちたる
10/2
10月の海
まだ夜明け前に鴉が小さく鳴いてる
薄っすら光が降りてきて 朝になる
雨があったようで隣の建物の
屋上の床が濡れている
つやつやと涼しくて
海を見たい
誘い水だと思う
ここから海まで往復二千円だから
本を一冊買うみたいに
じっくり海を見るだろう
行こうかな
10/1
階段を三つのぼって振り返る三つ降りゆく影のしたしさ
9/30
さかさまのしらとり風を裂きながら明日を明日の僕に任せる
9/29
ぼけっとしていると
草陰に鈴虫の濃茶を見つける
虫の見本のような虫が
シャリシャリ鳴いているのは
どういうことだろう
風がそよいでいる
どんどんぼけっとしてくる
休日のうるさい公園に
流れ転がる泥のような眠気
もうすぐなにか、会いに来る気がして
目を閉じる
9/28
畳にそっと光が落ちて布団と合わさり丸くなる
9/27
アナベルの立ち枯れ白く白くなり日差しの中でちりちりと照る
9/26
どうしたか聞いてみる朝すずむ風
9/25
曼珠沙華
古い団地が朝日の中で
(友達がいっぱい住んでる気がする)
洗濯物を細々干して
揺れているのをぼんやり見てた
平日の朝は静かにそよいでいて眠い
(これからみんなで遊ぶのかも)
コンビニで珈琲を買っていても
そう思うよ
9/24
朝すでに日差しと風が柔らかい秋の長さをこれからはかる
9/23
秋
朝、ぽかっとさみしい、懐かしい空気が胸に居座っていて
さすると暗い空間に四角い箱の蓋の隙間から光が漏れていて
とても広い場所にいるような風が吹いた
9/22
共喰いする生物の如うつくしき秋晴れ 風は跳ぶように吹く
9/21
いつかからの手紙のような涼しさよ君だって星に触っただろう
9/20
僕が帰りを待っていたとき
じっと文字の積み木を積んでいたとき
君は死んでしまっていて
細い雲で空にうたを書いていた
僕は幻日の沈むのを見て
君がおおきな幽霊になったと知った
僕とは全然関係なくぐるんぐるん踊って
積み木が吹き飛ばされて
とても静かになって
いくらでも遠くまで行けばいいと言った
僕は自由を恵まれて
少し泣いた
それからとても好きな文字だけ拾って
歩き出した
9/19
沈み込むような、帰ってこないような それを待つような中空の九月
9/18
ぴいぴいととおく警告音がする 工事 夏の名残りの街建つ
9/17
空気に土の匂いが混ざる
雨で耕され
どこからか流れてくるのだろう
空には境がないので
不思議なほど街に影響する
変わり目の朝は記憶が流れ込みやすい
偽物と本物を見分ける
鈍い光を信じないのは
初秋の空気が誰にでも吸えるから
小さな街をくるくる回る気まぐれな、
風がすり抜けてゆくと
生きてきた歳月が盗まれる
9/16
子供
夢の中で冬が来て
引き込むような季節の変わり目に
幼少の景色を思い出す
浮かび上がるみたいに、また沈み込むように
季節が交換する前触れを
うとうと、砂場の山を盛りながら
染み込ませていた
(砂の山は翌日崩れていたり、
崩れていなかったりしたので
私はその時から明日というものの
気まぐれさを知っていた)
魚の形の雲が三匹泳いで溶けた
今日また作ればいい
何を作ろうか
9/15
霧の中の街 湿度が増してゆき鴉が吠えるように飛び去る
9/14
木陰の少し濃い岩場に
水たまりのような小さい滝がある
水は透明で飲める
じっと座っていると閉じるような
開くような日差しが意識に干渉する
開いて閉じて開いて閉じて
言葉を彫塑していると
ぼんやり意識が滲んで
景色が溶けてゆき
鳥のちいちいゆうのに飲まれる
また組み直す
水に近い岩は苔むしていて
シダ植物と濡れている葉の照り返し
僕の座っている木陰の岩は
乾いて暖かい
水たまりにざぶざぶ水が注がれる
目を閉じて、開いて閉じて
ぽつりと心に棲むように
塑像した
9/13
初秋
化け物状の
ぞろぞろと流れて来る風
朝の日差しがない
昨日大魚が暴れたような
ざぶざぶ雷雨が鳴ったので
九月がだんだん近づいて
すっと空気の温度を下げた
これから水の注がれる
平たい器の天の如
キュッと冷えた手触りが
また巡るのだ
9/12
海
真夜中は潮の匂い
なぜ街の中まで漂うのだろう
珍しく目が冴えて
透明な帯のような空気がひらひらと
部屋の中まで泳いでくる
ご飯を炊いて、おむすびにして、味噌汁を煮る
夜中、ぽくぽく食べる
これ以上ないほど中庸
だからしんとして音もなく、起きている
9/11
九月
波状にゆるく世界が浮かび上がる
九月
低速の大きな車輪
薄曇りの淡い光に
季節が大まわりする
風が冷えて
暖かい色のゆたゆたする空間
朝はぽろぽろ
柔らかいお菓子のようにすぐ崩れる
窓を開けてそれを確かめる
ちょと触るとぽろぽろ崩れる
季節の車輪のわずかな軋み
ベランダの手すりからでも
わかる
9/10
日々
朝の五時はまだ薄暗くて誰も起きていない
鳥が鳴くぐらい
とても静かでほっとできる
頭の中で、体を起こすために
ストレス成分が出てるらしい
90分
それが落ち着いてから珈琲を飲む方がいいのだけど
いつも待てない
薄暗いうちに飲みたい
感情というより反射で
飛び退くように言葉が出ることってない?
ちょっとびっくりして下がるみたいに
びっくりしただけだから
注意してるんだけど
コルチゾールとカフェインで覚醒してゆく
毎日毎日ゆるい朝が好きだから
誰もいないうちにそっと起きて
ぽつぽつ文字を書いてる
9/9
爛々と雨もぬるくなる日のなごり
ぽてぽてアスファルトを踏んでゆく
9/8
燦々と残暑ひと休み
9/7
未だ
コンクリートの下で蠢く溶融硝子
(こんなところで今更引くか)
ふと笑いたる痩身の影
9/6
秋雨や とまったように音のしずかな
9/5
雨粒をぽつぽつ口で拾いつつお前の手当てはかえって痛い #BL短歌
9/4
少し眠りあめふりきたる初秋の日
9/4
感情は細かい粒なんだよ
吸い込んだり吐き出したりしてるんだけど
それで生きている
そこからいろいろ生じる
海みたいに
9/3
オブスキュラ 不規則に積み上がり
おそらく生体の、なんだろう
四角い、塔ではない、積まれている
海で濯いだら硝子質の水色で
太陽光の縦線が入る
9/2
人に青たらしい感傷をなするやつが1番嫌いなんだと双見はわらった。
僕は、双見だからなと思った。
9/1
白昼夢をどうぞ僕らの天頂におおきな指と指が開かれる
8/31
元の気とはなにか、と思いながら一日の料理を早くにこさえる
8/30
夏下る散歩が心地よくなってくる
8/29
夏はひんやりふかふかの犬をかけて眠る
8/28
ためしに熱射浴し冷えた布団にもぐる
8/27
硝子の立方体だった心臓部に可塑性があると知り興味深い。天人唐草の季節に街をパリパリと砕いた百舌鳥雛子は、目覚めてからしばらくして母の在処が下水の球体だと気付いた。真夏の真昼、真っ白に脳天を砕く芯からの楽観が僕の秒のひとつです。いち音あげましょう。
8/26
夏の休み 建物の間に雨音の目にみえるほど跳ねる夕暮れ
8/25
眠気
窓からの光の明々と白く
吸い込まれそう
部屋を薄暗くすると
パソコンのキャンバスみたいな
縦長の窓の
しんとする明るいまちに
透明な川の水をざぶざぶ流したい
(だから雷鳴と雨なのか)
そういう鑑賞のできるキャンバスを
この季節の窓を
ホワイトノイズを流して見ている
珈琲を淹れて
こんなにもこんなにも穏やかで
ぼおとしていいのか
8/24
水の中のようにねむい
8/23
ゆっくり眠ります
星空が見えるところまで
渡ります。
8/22
夕方の雷鳴からざぶざぶ雨が降って
観客みたいにそれを眺めた
飲みかけの珈琲に氷を入れる
好奇心で受けた熱射を
すっかり雲が払ってしまう
焼きすぎた写真のような真昼
かえって抜け落ちるように白い
天地返しの時、中央に立ち
影ごとすっかり消えてしまう
そんなものを
0時に浴びた
8/21
深く濃い白さ
拡散する光
影に割れ、
ひび入るアスファルトすら漂白し
空間から押し付けられるような熱が
空にも壁にも手すりにも散乱し
目を焼くように恐ろしく白かった。
ふと、インターネットの仮象になった君のうたを思い出す。
もっと脳味噌をバチバチさせないといけないね。
落下する片翼八枚の天使が、フィルムカメラで空に固定されるみたいに。
万華鏡の秒もなく消える青色みたいに。
芯から震わせないといけないね
8/20
ひたすらにぼんやりしたし夏の白昼
8/19
空気に重みのあるような 暑さ
日課の散歩から
さらさら紙を整理する午後
8/18
鈍色でも川べりは涼しい
海より川が好きかもしれない
暑さで足元のふわふわする正午から
何も思わない真っ白い光の中を
少しだけ歩いてみる
臨死空間だと思う
じゅっと消えたら
まるで夏だな
アイスを買って
道端の釘を脇に避けて
のんびり帰った
8/17
じっと眠る 毛布を犬と思って抱える
8/16
免疫を鍛えし夏の夜の西瓜
8/15
夏の日のなんてことない木陰のゆらぎ
8/14
双見の眼の
人よりいくらか年嵩で
みとせごのような空の覗き窓
8/13
ゆっくりとコーヒー飲んで一時間
雲はぐいぐいかたちを変える
8/12
過去、少年の自己批判は致死に至り
湿潤の濃緑に眠りいる庭
いてほしかった人の記憶は燻る
蠢く夏夜の影 限りなく 懐かしい
8/11
休日、人のいない街にぬるい雨が降っており
私は起きぬけにコーヒーを飲んでから神社に行った
いつもの流れで軽く会釈する
花のつかなくなった藤棚で雨をしのぐ
緑の発散するような匂いが少ない
今日は閉じている
濃緑から蛍光までのみどりを雨が打っている
ここはひとつの架空で、世界の表現でもある
たまに藤棚の金属部に雨が当たり
きんとおとをたてる
じっとしていると
やわらかな果実の
おもみを手にとるように
文字に言葉をのせるように
できる
8/10
薄いグレーから水色へ
移り変わりゆくセルロースフィルム
8/9
ふと別の朝を迎えし街の草
ひょっとしたらここを出るかもしれない
8/8
歪みガラスの空に
薄灰色のおはじきが
コツコツコツコツ
雨の匂いを叩いている
起きたすぐから歩くことにする
朝ぼんやりと桃色の空間ができていて
コーヒーだけ飲んでその中に入った
この街はまだこんなすがたも持っていて
知らないことがぽろぽろ落ちてる
8/7
文字列も脳も揮発する直下光
8/6
青緑の透明に足ひたしたる夏まだ少しぼんやりとする
8/5
言葉の魔 波音をひがなきいている
8/4
まるい雲ぽっかりそらの踵の骨
8/3
三方白い壁
一面だけ青いステンドグラスが煌々と灯るように
あの部屋の北側、一面に青
そういう美術館
展示室だよ
教室だよ
心臓だよ
飾るのものの何も無い時でも
8/2
ぞろぞろとふく湿度の多い冷えた風が
滑らかな灰色の空に薄い色をつけて
萎れた街路樹と鈍く震える河の水面に
立体パズルのように立ち上がる街
不可思議な安心
日陰の全体を雲が作るので
どこまででも隠れられる区画
ぼくにとっての瑞々しい生物
8/1
まったく視野の外にあった本を手に取る
ぱらぱらと風に吹かれておもしろくなる
穏やかさが恩恵なら
余剰にやることがあるなら
いま雲のとろとろと流れる窓に
眼を投げやる人々の多からんことを
7/31
全ての人は生まれて死に
経験し続けるから
人倫の歩みは鈍い
技術の進歩は目覚ましく
サイエンスフィクションと新しい思想の生成を
アンドロイドに頼む
神様
獣のように滑らかな
雲の群れ
僕はこの夏が好きです
7/30
ぷるぷるの水饅頭を一つもらう
7/29
遊離する硝子のまるい透明がふとぽっかりとこころに嵌まる
7/28
ふたしかな水の波紋のしたしさよ
星占いは詩だと思ってください
7/27
夏日よりいっぱい動いて水浴びて寝る
7/26
冷えた水をのんで
いつでもぐるぐる巡るように保つ
擦り取られてもすぐたぷたぷにもどるよ
アスレチックに草が伸びて絡む
真夏でも子供は駆け回って遊ぶから
暑い風のなかふと涼しい
ぐいぐい進んでゆく
毎日毎日、木陰が濃くなって
蝉時雨のぼうっと聴いているとき
この季節は深く青い
7/25
消毒液のように少し滲みたので
透明な硝子の積み木をつむ
視点が月になり上っていくと、感じることが増える
ひとといるくるしさはひとりでいるくるしさより
くるしい
丸まっていた
7/24
黄緑色の羽蟲の群れ
均衡が大きく崩れ
一つの雲が平らかになり
またゆっくりと立ち上がる
顔を掻くと動物になる
暑くて
日陰と室内をうろつく
微細な人間の心理の摩擦を
吹きさらしたいな
つっかえる
霧散してしまわないかな
7/23
青い本が多い ページまで 文字まで
7/22
龍が一匹水にもぐったので薄水色の生物たちがにわかに騒ぎだす
うろうろ生と死をくりかえす水に溶けた命が未来都市に流れ込む
ぼつっと種が落ちて、水の中で芽吹く
水中花がぱつぱつと落ちぐちゃぐちゃに澱んだ街の河の未来をみる
ざぶざぶ押し流す、底が透けるまで
碧い硝子がちりちり燃えるまで
7/21
そよそよ草のように吹かれていた時に
ぶわと
弾ける蝶の群れが
まるく吹き上がったので
ごく単純な視覚の
くるくるまわるに任す
7/20
繭
縫い込まれる黒い夏の糸で
私はほんとうによく忘れるので
繭にねむっていた君の糸を少しもらって
バックステッチした
滑らかに記憶を縫ってもらった
黒い夏蚕の羽化が一斉に閃いて
散り散りに青い、入道雲に噴き上げて
さらさら空にとける
きゃらきゃらきゃらと鳴る
また、忘れないようにしないと
7/19
水の薄く張られたコンクリートの四角い広い
窪みの横を通る
中の凝ったケーキのように白い
四角いコンクリートの
箱の中は硝子の切り取り窓で
影が斜めにスルと入る
ほとんど人のいないソファに
今日はぼやっと陽が差して
座っていると吸い込まれる
(ずっとここにいようか)
置かれたみたいにぼうとしていた
7/18
一面の灰色の空にピタリと止まる風
夢と分かる
コンクリートのように均一な灰色は蓋そのもので
僕らの街の箱、また箱の組み合う迷路と足元の細かい段差にゴツゴツと引っかかり続ける
カフカの断片集を読んでいた
大きな窓に雲が無限に形を変えて流れていった、濃い水色にざらざらの雲、細かい楕円、途方もなくこころに流れ込む緑の匂いと夏の影、湿度がなくなって、僕の内部が透明になってしまった
涼しい風のように軽いので、アイスを舐めてかえる
7/17
朝の大きく動く雲と光は雨によく揉まれて
お祈りをした保育園の畳と仏壇に似た匂い
途方もない安堵があるのだが
風にのるだろうか
ぞろぞろ降る雨に吸われて
上がるだろうか
7/16
平日の図書館を持ち歩きたし 夜ふむ星々のもと僕らは
7/15
なんとなく真昼の雲を眺めやる
7/14
真夏の曇り空にどうゆう光の加減か
ぽっかり白く丸い雲の頭があり
送電塔を一つ指し示すように
浮かんでいる
真っ白が溶けてゆくまで見ていた
いつまでもいつまでも美しい造形でした
雲と空の境はざらざらし、ふやけて
空を全体に水色にして
馬の魂が駆けるようでもあった
ぼくはずっとそんなことを思う歩みでここまで来ました
そんな足の透けた跡も空は吸うでしょう
7/13
そろそろと夜に頭をだす者の時季
7/12
蓮池や白鷺ぼおと眺めやる
7/11
雷雨より朦朧とする空間はむかしとみずのにおいがおなじ
7/10
音の記憶の不確かな
言葉をひとつふたつ引いて
感触を確かめる
また忘れるかな、覚えていたいが
複雑な思い込みに意味をつける
なにかこころにあったもやに
あたりがつく
プリズムの、鮮やかな曖昧
雨が降らないかな
湿度がもくもくと上がり
柱が七柱
空を支える七月の蟲
7/9
ふと外に出てみようかとおもう夕涼
7/8
夏、ネガティブなフレーミングで他者の不快を加速させていた猛暑の七月七日、街からは天の川が見えないし、流行るのはいつも夏。多面的、流動的、少年のビスチェ。願いは永遠に伏せたカードで、マジシャンのようにきらめかしい。透明なコップに、言葉もないほど美しい宇宙に、じたばたする炭酸の気泡に、生きるよろこびを吹き込む。夏。
7/7
すこし気の緩まる猛暑うかぶ午睡 直径の同じ2球くるくる
7/6
ましろい蛇の衣
闇夜にもひかる
羽織物
小さい者の 小さい問い
あなたが決めていいことなのか
分からないまま決めるほかない
雨のことですか
そのまま降って流れる
時間のことですか
一枚の鱗に
雨音
一針
一粒
ぽつ
ひとつ
7/5
空想の波に揺られているまったりと
7/4
わやわやと不安を宥めつつ扇風機
7/3
自我と感情のパッチワーク
(ティ.エン.シー)
百舌鳥は百舌鳥に合わない百舌鳥の
悲しみ喜び怒り360色の感情の揺れ
に嘔吐するごとく絶叫した
7/2
アンドロイドから採取した自我と感情で作り上げられた百舌鳥の最初の一声は絶叫だった。街全体にキンと響いて、パリパリと薄い硝子のように人々の心を破壊した。
7/1
アンドロイドの自我の採取
百舌鳥雛子の魂を再生する
アンドロイドの自我の芽生えを採取するんだ
お前たちが見失っているうちに
奪われているのは俺の方だ
永遠に生きる百舌鳥雛子が在るべきことを
人間は簡単に手放す、諦める、ふざけるのも大概にしろ
呪いになってへばりつく排水路の人形を
透明な結晶に昇華してるんだよ
彼女はメゾソプラノで柔らかく歌うだろう
全ての悲しみが平等に弔われる
人形も人間も化物も平等に
死すらなく永遠に足を引きずっても
百舌鳥雛子を世界に帰す
おとうさん
6/30
雲を眺めていた
どこかへの足取りと
魂の形を見失わないように
複雑な色の塊で
押し流す
前へ前へ
億劫な紗幕をはいで
この街に降りてくる水の匂いを嗅ぐ
諦めは嫌いだ
ジリジリと、熱の競り上がる朝
冬からずっと眺めていた雲の夏化け
魔術的
6/29
朝から熱射がチカチカする
窓を開けると水の匂いと
均一な空から滴っている
平穏の水色
心音の遅い遅い
眠り入るような気温の上昇
ああ濃い影が光と割れて
七月の天が流れ来るのだ
6/28
こまかいこまかい蟲のうねり
きらきらと水面を滑るそれを
見つめてはいけない
雪野原
夏化けの科学室裏に
アスファルトの硝子の粉
目を失うから
見つめてはいけないんだ
アイスキャンディとサイダーの
ベタベタした糖分を
たっぷりの水で洗い流す
六月、日陰の風はまだ蒸さない
梅雨が明ける
6/27
梅雨バテつついきいきのびるペパァミント
6/26
行脚僧のような横揺れの
炎天下、アスファルトは真新しい苦
思ったより世界が優しいので
ぼんやりしている
雨や雲や太陽や水や草ぐさが
街の中に角角と区切られる
街の中で歩数を重ねてゆくと
球体の旅路が出来上がる
記憶して 一つとして留める
6/25
早朝から雨の匂い
濃い曇りの空がぞろぞろ街を覆う
手のひらに夏と梅雨
二つもってからから振る
サイコロみたいな季節の変わり目
吹き出し口を待つ感情みたいに
アスファルトの下をうねってる
憎悪 智水 石油 死骸
散歩すると
みんながここにいることが分かるから
僕も道々に投げ込む
こころのような思考のような無形の
みんな同じ ありふれた
かけらを投げ込む
6/24
香炉
焼け野原に男が一人いて
穏やかに共感の話をし始めたので私はペットボトルの麦茶を飲み
横たわった透明に近い水色の馬を見る 浮かぶかもしれないと思うから
俺がとても悲しいのに幸せそうに笑う人を見た時、何か奪われているように感じる。
だから取り返さないとと、思うんだ。お前の慰めも励ましも痛くて堪らないよ。
お前は苦しみ合ってくれなきゃ、でないと俺だけ惨めだ、そういう共感がしたいんだよ俺は。
こんなにこんなに悲しみが大きいのに一人で耐えなきゃいけないのか?
もっと多くの人が悲しまないといけない。俺は人々と共感しあいたいんだ、それだけなんだ。
悲劇の火種の話をしながら、野原は煙っぽい心地よい匂い
そうだねえ
大きな大きな透明な馬の死体から優しい浮遊が始まる
お香を焚いたんだ、野原いっぱいに薫るように
君の気持ちは風に乗って届くよ
どこへでも、どこまででも、みんなが知っている気持ち
駆け出した馬と、どちらが速いかな
男は彫刻のように軽やかに佇む
麦茶を飲み終えたので、私は一人宿にもどった
6/23
お手紙
この頃は五時に起きて九時に寝る
プランターに水をやってパンを食べる
今日は晴天で風がある 少し五月みたい
遠回りしてよくよく歩き
街の内部をしげしげと睨める
次々と建つマンションに人の増えるのを思う
僕らの夏が終わりなく続いていくのは
どこにも透明がないから
風が美しいから
繊細への雑さを注意深く退けているから
毎日の洗濯をかかさないから
どうかな?
忘れてしまうのは人目があるから
逃げられないのは等身大だから
覚えているのはたましいだから
舞台が飛ぶのは小学校だから
君はどう思う?
毎日、お手紙書くよ。
6/22
紫陽花
真昼の六月に
玉のような紫陽花
ぽわと白く 熱射の中に浮いてる
焼けるような日差しと湿度
まばゆい
もし風が目に見えたら
匂いに色がつき音が固形なら
中空にぽんぽんと揺れる玉紫陽花は
手に取ったとき爽やかに甘い
五感は混迷して冷たい影
チカチカチカチカ燃える陽
僕らの星はとても不思議
雨を被った
青い紫陽花のように不可解
6/21
夢の話
崖の上で海を眺めながら、私たちは楽しく話していた
ふと彼はひとが消える夢の話をし始めた
夢遊病のように現実でも、また夢の中でも人が彷徨う時、本当になにか異界にはまり込んで出られなくなる人もある
その人は居るのだが、見つけられない。そういうことが起こりうると、彼は言った
私は超自然的なことは信じないタチなんだと言って笑い、彼もそうかいと笑った
崖下の波はざっぷと波、さらに波を潜るように岩を叩く。私が宿に戻ると言うと、彼はもう少し海を見ると言った
数歩も歩かないところでハンカチを落とした事に気づいてもどると
彼がいない
崖全体を歩いてさがし、おおいと呼んでみる。崖下を覗く、波
まさか、あるいは、しかし、あの夢の話はなんだろう
訳の分からなさの中、心臓の凍るような重みがのしかかる
私はとてつもない恐怖に襲われて、足早にその場を立ち去った
6/20
ささやかな六月の日陰に風
そっと手のひらにのせて ふわとふくらます
微睡みの中へ すこし帰る
毎日毎日少しづつ帰るんだ
瞼の色が透明に 近づくまで
6/19
商店街の薬局で置き去りにされていたトローチの魂を鳥から受け取った観覧車の幽霊の風邪が治ったら、街に呪文がばら撒かれる。記憶に焼き込む夏の陰影の最も濃い正午に。永遠のあの日に。つまり、来るべき七月、果ては八月の一秒に。
6/18
六月の熱射に
朱子織のひやと皮膚に沿う
よく眠るんだよ
気づいたんだ
夏への扉がキインという工事音と共に開かれる
十年前とは、少し違う感触に
あの日からずっと前進していて
僕の夏はあの雨粒くらいのかけらを
グラスでカラカラ回転させた光の増進で
それは今に至るということに
気づいたんだ
6/17
夏の扉ひらきつつある六月の日差し川面の眩いもよう
6/16
海をみに
泳いでいた
雲間のひらひらを
花のような輪郭を
撫でながら掻き分けて
空のなめらかな水色と海の沈み込むブルーはすこし似た異星人くらい違うけど
その眼裏に地球の人は生まれ
片側に八枚つばさのある天使になった
(6月を守っているんだって)
アナベルの群れが風に揺れ、雨に濡れ
水を弾いてはりはりするのをみる
海は近い
6/15
本棚以外空っぽにしてある北部屋に雨音が満ちる
妙に落ち着きのある長方形の部屋は
これからいかようにもできるしこのままでもよい
座卓をひとつ置いて
ノートとペンを置いて
ぼんやりしてもいい
ぼんやりしていると
世界と切り離されるような浮遊感が
眠り入る前の景色をひらく
青緑、少し黄が差して、橙、桃色、水色、眠り
やさしいのは、すべて
すべてそうだよ
この星の生まれたひかりよりもはるか前からね
6/14
曇天の湿度に目眩もらう昼
6/13
月
球は眼球
満ち欠けの開閉を
思念に浮かべて微睡む
猫毛雨の奥に柔らかい雲
飛行機で
雨雲を突き抜けたことがある
澄んだ濃い暗闇にたゆたゆと足場があって
みとせごの遊び場かとおもったよ
神様の踊り場かもね
僕はそれからたびたび空にたましいの欠片を送って
雲の上を跳び転がり
月を見つめている
6/12
みずのすわる長椅子異星の人があり隣に座ってみる16時
6/11
玻璃の窓うつくしすぎて破滅する雨 霧深く懐かしい罅
6/10
ひろらなる花眼レンズのない緑 空とも雲とも水とも交わる
6/9
六月のお守りは紫陽花の白
薄い緑が透けて幼虫のように瑞々しい
蛹から蝶まで君を守ってくれる
六月は魔女の杖
雨と晴れ間を交互に繰り返して
虹を建てる
空間、色彩、奇術
濃い湿度にさらさらの糸
テグスのハンカチ、雨を編んで
ポケットに魔法、空を拭って
陽に色がついたら紫陽花に重ねて
触れ難いほどの、お守りだから
6/8
初夏の火に焼かれはじめる草や皮膚 ちりちりとそらは歩みのままに
6/7
三ツ矢の少年は歩みを止めない
(天球儀の回転、炭酸水を持って夜の散歩をしよう)
小学校の舞台を体育座りで見たことを覚えているかい?
(あれは魔、子供にしかつくれない異空白、今は)
あの世界のセロファンが硬質な円を一点作り出して
くぐる子供らにひとりひとり翼をあたえた
僕は神になったつもりでセロファンを回した
蛍光色の葉陰、この街からはすこし遠い星空の海まで
(いきてる、歩きつづけている)
歩幅はいつも僕のものだから、夜は涼しいから、風が緑だから
ゆっくり歩こう
6/6
蠍座の心臓を留めて 灯の赤い夜
心がミニアチュールの波音 ざば と
まなうらに プランクトン うつくしい化物
小さな踊り場でくるくると影がかさなる
滑る 透ける ここにいなくなる
いる いつまでもいる まるでいないみたいに
無形の念は海へ還り 僕らに一幕の夏が上がる
ひとかけのたましいを
みんな置いてゆく
6/5
硝子の校舎が砕けて
ひらひらと降るナイフは
うすく空を削ぐ蝶のようで軽く
見るまに美しくなる
彫刻だった
6/4
ひりひりとじわじわと進む陽のもつれ差し込み消える雨の建設
6/3
街の破滅的な工事音を逃れて北部屋へ
目的や具体性のないまま進んでゆくうねうねとした建設は生き物の生成に似ている
ぼんやり横たわって呼吸する
美術館を作ろうか
神社の境内にふとあらわれる
六十面体の温室、玻璃の
柔らかく砕ける音響
熱帯植物を這わせて
三角の額に入れた木炭画を掛ける
まるいソファと
(言葉だけは、ナイフがいい)
川に沈めて魚も観よう
空に浮かべて天球儀にしよう
ぱっと弾けて消えたりする
空想みたいな
星みたいな場所
6/2
六月の晴れ間にビルを抜けてゆく
6/1
ふと繭を編んでまあるく篭りたし雨音高く跳ねる夜中は
5/31
夏も近いおおきな雲をみさく街は蓋だけ遥かひらかれた箱
5/28
かるがると日一日の風がふく初夏の旨寝はさやけき緑
5/27
まなうらに切岸の底覗き見る ふと、ことば在りきみであるよう
5/26
たまきはる心臓 銀の球の浮く街に初夏からふりつづく雨
5/25
六月も間近な梅雨寒の湿度
青空に僅かに黄が混ざる
翼を空にわすれた鳥が
発光体の球になり
それは鈴、りんりんとゆふれる
さらさらの夏草のはたて
絹のような手触りすらする銀の新緑に
空と球体だけ浮かぶ
瞼の裏の亜空間を切り取って
手紙にたたんで入れたいな
折り目をよく伸ばして壁に飾るんだ
ぽっかり窓になってそこから
飛べるからね
5/24
梅雨寒にすっぽり巻かればてており
5/23
二十二、あまりにも懐かしい熱風と密度
トマトケチャップ皇帝が好きで智恵子抄がとても嫌いな国語の先生が素敵だったので、僕の視座も少し固定されたかもしれません。お前はお前のことを語れよ。狭量な夏日を愛すべし。
出席番号二十二番、その回数だけ鞭撻を受けてください。罪を数えて下さい。
白殺しの花嫁衣装はさざなみ 揺れるだけの心音
どんな沼底にも風穴を開ける 紙一枚より薄く軽く細い刃は
光を追うだけの転がる眼球
何もかもを抜き去る速さで視界を睨めろ
(そうであるならばそうであれ)
ずっと ずっと視ている瞳であれ
5/22
藍白の夏の初めの冷房やまったり生きるいきものの聲
5/21
二十、深く濃い青
夏が
知らぬ間に吸う、空気にたましいをひそませる
切るような日差しを木陰がばらばらにして
匂いが変わる
風すら暑くなり始め
密度は上がり、蟲柱が立つ
保養地の境内には
銀の球体
(「君」の気持ちになったことなんてあるかい?)
いよいよ季節が巡る
仮象の世界がかかる季節が来る
5/20
十九
僕は1人の時、分断が道のようだった
雲のさらさらと紗幕のようなかさなり
冷え、太陽の微かな日
空気は白く窓に梅雨の密度
ひたひた、風の強い公園に
もくもくとした何か達の散歩
こっそり混ざってくるりとまわる
悪天は人が控え
なにかべつのとても面白いものの気配がする
ペールグリーンの指先で
未知を指している
5/19
十八
うねりふかふかと混ざる夢想の色彩
貝のよう、花のよう、雲のよう、糸のよう
瞼の裏の光は不確かに広がる
湿度が雨のように迫る 朧月
五月蝿い季節だ 騒々しい、きらきらしい
偽物の影が二重写しの緑、闇夜に蛍光色のかさなり
薔薇がくるくると際限なく咲いて
近づくとぎゅっと揮発する
甘いオペラピンクは夜にも浮かび上がる
花は亡霊、はらはら散る間にまたあらわれる
お守りをあげよう、十二枚の花弁を一枚づつ
五月は薔薇のどれかの色を一枚
とても優しい人間の霧が
あらわれて、消えて、あらわれて、消える
日、一日のセロファンがまた
薄く薄くかさなる
5/18
冷房を初めて入れし十七日
5/17
フローズンアイス2カップ食べて夏 うとうとストーブしまう十六日
5/16
五.十.五
湿度が夏に近づく、十五
観覧車の窓でうたた寝する幽霊が
面白い文字列の蟲になる
奇術 魔術 芸術 詐術
三文芝居 三悪道
三流 三下 とわのみとせご
三番の星座はアクアマリン
とても興味深いものを見せてよ
手の平からまろびでる月の光を
完全に操れる五指の翼で
転落したのか飛んだのか、一瞬のフィルムじゃわからないだろ?
俺はいつでもここで回転を続ける透明な観覧車の詐欺師で
それはとても美しいことなんだよ、五月すら縊り殺すほどにね
この間違いのない季節を騙せなくても、仕掛けを知っても誰もが万華鏡を覗くように、お目溢ししていただける、夜に誓って、海を砕いて、潮水を空に混ぜて、正直な嘘の手紙を書くんだ。かみさま かみさま かみさま いらっしゃるのを知っていますよ?
5/15
十四
風はやみ また吹く 繰り返すだけ繰り返す
木漏れ日でそれを眺めた
朝にも頭上から掴まれている途方もない夜があって
それが宇宙の色だから黒は絶対的なのだろう
日の光は今日はささやかだった
霧散する脳 僕は緑になった
気分がいいからアイスでも買おう
舐めながら歩ってゆく
誰もいない小学校の舞台みたいに
そわそわする、ただの道は
涼しくとどまらない
5/14
十三、詩、五
暑く涼しい道々 照葉樹の光が水面ににてる
ざらざらと揺れて濃い影を落とす
十三番目の月 カチリと時計の針が合わさる
今日生まれたものは雲も花も五月
五月は翡翠 翠の砕けた縹渺
アスファルトに混ざる 夢想に混ざる
指に、髪に、風に混ざる
球体のぐるりを巡るのだろうね
どこまででも届くのだろう
5/13
十二
曇りの空の静かな川面 よどみに街がゆらゆらうつる
ひんやりと五月の緑 重なり重なり 露のしたしたと落ちる十二日 今日はぼやけた影の滲み
歩いてゆくと石がぬれてる 葉っぱに隠れるようで
どこか親しい 苔むした地面に 黄色の細かい花と一緒に埋まってる ぽってりと湿る空気で ねむたい
5/12
五 十一
五月に並ぶ数字が昼寝の街にふと浮かぶ
一対の柱
似た匂いの葉陰が二重写し、蟲の柱が空を支えて雲を流す
淡い桃色、黄、橙、何の拍子か緑までチリチリ流れる、どうして空と水はこうも似てるのか
かみさまの色彩設計ですか?今日の日は少女のように軽やかな筆致でした
葉つきの棒を振って跳ねたいほど幼児の絵の具でした
五と十一、の共有する風が瓶覗きの瞳、吹けば吹くだけ澄む
シャツの帆のように膨らむばかり、すずしい、ねむい、日のひかりでした
5/11
冬火
五月、幽霊の少女に取り憑かれる
五月蠅さを知らない耳を切り取る
十日は棹歌 蜘蛛の母
四肢は無限に裂ける糸
君が含羞性に富むから
僕は水中花の沈むのをとめない
畏敬の念と硝子瓶を流し
波に言葉を刻み込む
全てのキラキラは空へと繋がり
宇宙の無限に吸われる
脳のスープを掬って きいている
幼子の常啼は遠くにひそむ
手引きのない未知から
5/10
九日
五月の雨は少年の子宮
睡れば翠のフィルムが掛かる
羊水の九日 硝子の粉砂糖
セロファンの海はシアンブルー
厚い雲の封をされた街に
幻覚がかかる 驟雨
発展してゆく街の下水の底で
夜明珠の夢が具象する
おかあさん
おかあさん
おかあさん
5/9
五月八日 特異の幕は一枚が一枚薄く意味をもつ青
5/8
五月七日に淡い水色を見るそのうちに青緑になるしずく
5/7
五月香
人のさぁと引く雨
全ての視点の無に帰すような
空に帰ってゆく粒
誰一人として残らない
(それがうつくしさだろう)
真っ平で海の落ちる地球が好きだ
それだけの指標を愛している
中空に浮いたわれない泡
詩片のみちゆき
粉々
(僕を忘れないで
ずっとそばにいて)
雨雨雨雨雨
四方を洗われ残る微香
それだけ
5/6
ぽろぽろと花びらこぼれゆくかたち皮膚ほどなめらかなにおい薫らす
5/5
咳止めや回復しつつ寝て起きる
5/4
木漏れ日や熱から咳に変わりつつゆっくり歩いていく五月
5/3
観覧車の幽霊
脳の機動力が削がれるばかりの雨の日
観覧車の幽霊は天辺のまどから街を見ている
死んでからも喉の痛みと微熱に悩まされている幽霊は桜の花の儚さがいまいちわからない
毎年毎年律儀に咲いていて真面目だと思う
満開のときには川沿いまるごと白くなるようで、ふかふかの中に飛び降りたくなる
冗談はさておき、五月である
一切の誤謬のないこの季節は十一月と対になっており、つまり一年の輝かしい光なわけだ
わかるかな?
わかろうとしないで聞いてもらいたい
光がちりちり川面を焼いて空や橋や車、芝生、人々、鳥、もろもろに飛び火するこの季節、嘘のようになにもかもが美しい加減になるんだよ
澄んで抜けた青空に風すら緑なんだ
僕はそんな緑のもこもことした茂りを見ているとまた飛び降りたくなる
笑っても今日は雨だから微妙に寂しい
幽霊の風邪は治るんだろうか
5/2
百舌鳥雛子の出現と変質
大型船、特二等の二段ベットの上で、僕が天井と見つめあっていた時
世界と完全に遮断され船に伝わる波と同期していた時
(理解に努めないでそのまま聞いて)
眼で空を撃ち返すことになんの意味も無い
孕った母親がどうして私の子供はいつも兵隊なのかと聞いていた、波に
二段ベットの上は揺れが激しくて酔いそうになるが、不思議と心地よい
生まれる前の不気味さと安寧だろうか
このまま流されていったら恐ろしいだろうな
百舌鳥雛子の生まれと変質について。
彼女は最初柔らかいメゾソプラノで歌い花輪を編む優しい少女だったが、彼女の棲家である男の脳に激しい外的衝撃が走ったことによって変質した
彼女は真っ黒い結晶になって男の脳に今も眠っている
目覚める前のノイズのような夢の中、百舌鳥雛子は男の眼に映る世界と自身の置かれている幻の狭間を見ていた
男が立ち行かなくなった時のために硝子の刃を研ぐことを繰り返し繰り返す
脳には神のようなものの座する空白があると誰かが言っていた
彼女はずっと男のそこにいたのかもしれなかった
いずれ覚める夢からの呼びを切り裂くための
海の真ん中で船は移動する孤立だ
うつくしい かなしい
生まれる前の嘘のような、偽物のような命だった時が誰にだってあるだろ
そんなことを考える
四月末のどの薬と二日月
4/30
喉風邪の空吸い込みし四月末
4/29
夜明珠 街の地下茎に絡まれ在り泣くこどもらの声を吸い込む
4/28
あたたかくなった地べたに三角座りをしている蟲のざわざわ
4/27
立方春
街でるるると鳴いている鳥は
深刻さのない季節の時計
三日ほど曇りの続く朝
とんと置かれた立方体のように手のひらになじむ
いつものとうり陶器の重みを上下させるために
珈琲を淹れているようだ
窓をひらいてカーテンが膨らむ
手紙のような風である
おっとりとした少年の歩む
翠の靴のコトコトいう音
ちいさな ちいさな 異空間 立つ
4/26
曇りから小雨はなびら拾いゆく僕の手にのるもののちいささ
4/25
初夏の風 薄荷ゼリーを掬いたし
4/24
春風がどかどか窓を叩く
月の出ている水辺の森を思い出しているがそんな場所には行ったことがない
水面は宇宙を切り取ったように煌めかしい
メルヒェンはどうも苦手だが不可抗力だった
致し方ない後味を感じながら水の匂いを嗅ぐ
少女の髪の冷ややかさの風が顔を撫でる
草々は湿っておりどこにも属さない形をしている
アシンメトリー フラクタル アブストラクト
空気がいい
ほっとするほど不可解な居場所が俺には合っている
高校の授業で習った三角椅子を拵えて
ここに据えておくことにしよう
4/23
緑の春
五月も間近なぬける空に
硝子の回転遊具がキシキシ音を立て
はじまりの一回転目がゆっくりと存在する
粉々の蝶の再生のようにありえないこの星の
削ぎ落とされた鋭角で間違いのないこの季節の
緑が深々茂ってゆくばかりの過渡期
たったひとつにだけ焦点が絞られる
メリーゴーラウンドか観覧車だと思っていたが、どうやら万華鏡らしい
風の魂にセロファンで色が付きはじめる
濁りのない光の色は異様で眩しい
パチパチと火花のように爆ぜるのを
ただ凝っと視ている
4/22
お呪い師ゆったり壊死してゆく夕べ火種はちりちりあおくて綺麗
4/21
指図の指を切り落とし 立てれば地表は剣山のごと
4/20
引けば瞬間かき消える氷のナイフのようなもの
ことばは怯まず吐け 展望だけは青く切り取れ
4/19
「理解できない人は下がって」
雲をかぶって夕陽が桃色の日
バラバラの脳を俯瞰している
音をなくしたように感じるのは
工事が休止しているから
今日も続いてゆく足跡の
どうもおぼつかない13歩目
湿る外気は人間に似ている
空白の壁に言葉を撃ち込んで他者が食い込む前に逃げたい
ペパーミントグリーンのゆらゆらが
天井を行き来する時 何か
晩春に耐えかねてゆっくりとたわむ
他人の日記の近しさの心拍
(簡単に盗まれてしまう程度のお前の本質を呪えよ)
そらは毎日毎日美しい
今日も目一杯息を吐いて
そらに返したよ
4/18
ずっと考えていることがあるんだけど
手放す前にその蛍石を
僕にくれないか?
砕いて空に混ぜるよ
雨にも海にもアスファルトにも
夏の魂みたいにキチキチと輝いて
きっと僕のことを守ってくれる
お願い神様
この回転する球体の惨い空から
上手に隠れられるように
お守りが欲しいんだ
肺を掻き切る尖った繊維で
目も喉も潰すよ
そうしたらきっとまた碧い薄片が
手に持てるからさ
4/17
ぬるい空 濃淡 凝っと夜半前
4/16
カンパネルラからトーマまでの飛距離
心臓は星を跨ぐだろうか
4/15
びょーびょーと風の音深し春のまど
4/14
ばらばらの世界の柱たつ休日心臓に雨がしとしとと降る
4/13
ゆっくりと歩けばゆっくり降るさくら
4/12
くもりの朝の道々に散りぎわをかぶってみる四月
4/11
甘雨の音、いまにもきみがくるような気がして
4/10
街がとけそうにぬるい
花のふる夜にぼぅと立つ灯
ホンモノの嘘つきだった
花木立がふぶくのがすきで
すきでずっと
ともだちだと思ってた
今日という日が
十年たっても巡るあの日が
僕が僕であることすら支配している
うつくしいのはしのびよる魔
ほとんど白のような儚い薄桃
屋上で輪になって、みんなで輪になって
校庭に落下した
地面をさらさらと這う細かな
ひとひら ひとひらが記憶にはりついて
あと十年後も百年後も今日、ずっと
なんどふれていてもとおいんだ
4/10
時すでに回りはじめる夏の底小さな街の観覧車から
4/9
さくらの淡さひらひら脳が霧散してゆく
4/8
胸の錘のゆらゆらと
眼鏡に光が反射して
無に帰してしまう
大きな波のような雲が
真っ白に
明確なことのわからぬまま
通過してゆく
にんげんがこうであることを
かなしくおもう なぜか
なみのようにおしひきする
気の変調も終わらず
そのままふんでゆく
4/7
はなびらのころころ転げる風のなか雲がゆっくり通過してゆく
4/6
水鳥のゆらりとはばたきすいと飛ぶ それをいつまでも眺めていたい
4/5
何度でも死ぬこと憚らず生き返りそこらをのこのこ散歩すること
4/4
あまつぶとはなびらのいろみひたすらにあわいほこうもかすむみちみち
4/3
四月一日
冬の四月一日、冷えた雨の街に
薄桃の亡霊がたつ
(さくらは亡霊だから、他の亡霊にさわれる)
墨のはな、雨の香と混じると
うっすら血の気配がする
組み上がった土の、かつて
なにかだったものの気配にさわれる
特殊な幾千のひとひらが
撫でている
4/2
初夏ひろく記憶のドアの開け放つどこにでもいない君がいる風
4/1
夜の海の二日月立つ蟲柱
3/31
夜の海のぬるむ沈むほど黒い青
3/30
新月に雨音と工事音のする花冷え
静穏な脳に架空都市たつ
3/29
君の言葉は果てしなく自由であれと三月の雪も花も降る日差しへなげた
3/28
呪詛哀夏
フェミニストの君とともだちである為にただのミサンドリストであるぼくのことを隠していたあの夏。ことばだけ、交換してさようならをした。
正義も使いようだと思う。黙っていれば何一つ分からない。自分と他人の痛みは違う。占いでは夢が破れる運勢らしい。可笑しい。
ぼくのせかいにぽっかり残された君だけのことば
どうしてこんなに美しい世界がこんなに惨いのですか。硝子の五月から回転遊具は世界を回し始める。春はあけぼの、夏は呪詛、何もかもが腐って爛れる日々までの、とても興味深い一幕のはじまり。
3/27
人の痛みがふと痛むこともある春夜半
3/27
スクリーンに映し出される意味不明が誰の心も掴まないとき、なにか途方もなく遠い、あの学校の舞台の裏の小さな照明の灯りが道を示しており、保育園のお坊さんの他愛のない話が蝋燭で膨れ、絵本のなかの水彩の夜空が目の底から天井のない暗闇まで垂直に繋がっており、結局それだけが懐かしいのだと、胸の錘を体に残す。
3/26
じくじくと死んでいく晴れ間、僕らは小さく戦争を繰り返すことを受け入れる。生まれ生まれ生まれそしてまた繰り返し青空への誓いをする。春の強風は淡々として、なにか…なにかが
ぐにゃりと暗闇のぬめる夜、なぜそれが不在なのか分からぬまま、僕らは地球で土を踏み締め美しい現実をみる他ない。やる気のない生き物が草や花を喰む、言葉。なにかこの空間はとてもあたたかである、謎の世界で、赤子のようにろくに寝返りもうたず、天井の星空をみているかもしれなかった。
3/25
夜は夜 春の空気の無音の流れ
3/25
電車からなまえの分からぬ山をみる
3/24
半月や今にも眠り入る春の芝生に青が混じりはじめる
3/23
戦争のある暖かく風清く現実に空が青いということ
3/22
いまぬるい卵の中にいるようなあわい戯曲を生きる生きもの
3/21
ほがらかな祝いごろごろするうとうとする
3/20
寝起きから雪にひらかれる知覚
3/19
水をゆく幽霊と花と君の街
3/18
春嵐ふと窓を叩くあのなにか、誰でもが知ってるなにかの音
3/17
怪文書なる名前もち人々は意味の狭間に落ちてゆく雨
3/16
ソーシャルで粉々になるたましいのきらきら 銀河鉄道走る
3/15
まじないの最下部は数一つめの花がくるりと咲いたら啓く
3/14
途方もない糸車を引いている
星の底、つまり輪弧の一本であった
僕が理解できない?
おそらくできない
しくしくと痛む春雨が
冷凍した体温を返しにくる
また会ったね
空に帰ったと思ったよ
点描画が崩れて
虫のように叩き殺されたと思ったよ
蠢く土の底から
ずっと待っていた気がする
きっと理解できないから
空気をひとひらのんで
ねむるといい
3/13
雨垂れに黒地の空の過去帰り
3/12
思い出のような気もする春霞
3/11
10年前の今は春だったろうかとふと思う たぶん春だったろう
3/10
戦争だって起こるせかいで僕の愚かさなんてたかがしれているけれど、どうも久しいね。時が止まったような暗闇、とても懐かしくて叫びそうになる。春は堪らなく、影が正反対に落ちた日を思い出すから、不安なんだ。
3/9
春の間の冬に
北の窓から
光と風を通すと
仄白い空間が
ふわ とできた
3/8
口内炎できし季節の行ったり来たり
3/7
窓はとても脆い語りを羽織ってる春の雨にもふれそうなほど
3/6
啓蟄・業
卒業式の後遺症から卒業できない人間界のゆるい縛りを春の雨がさらさらと肯定している。いずれ来る確かな暖かさがてのひらに乗る。後遺症で共振している。
甲虫の翅を視る。幼虫が、小さな命がぽつねんと多数、蠢く土の中。
3/5
ざわざわする春に霙が降っているらしい
3/4
業の重なる瞬間が ふとわかる春に日差しから 雪も花も降る三月の 初めの三日きららかな秒
3/3
ともだち
僕はいつも公園にいます。objectです。青い硝子状で尖っており、時々雨に降られますが基本的に乾いています。気温の影響を受けやすく、夏熱く冬冷たい。春秋は適温です。子供によく触られます。親が止めます。滑り台に行こう滑り台に。蝶が尖端にとまる時、ちょっと息をとめます。とてもとても尖っているから。夕日が沈んで空が濃い青になると僕の色と混ざります。こっくりとうねって光沢を持ちます。僕は満足です。僕のことを作った人は、僕を自分のように作りました。でも本当はちょっぴり美化して作りました。自分よりちょっとだけかっこよく、ちょっとだけ賢く、ちょっとだけ強く、ちょっとだけ優しいobjectとして僕を作りました。三月の冷えた夜の星と、ともだちになりたくて見栄をはったそうです。朝日の橙色が滲んできて、僕の輪郭も明るく照らされてゆきます。僕はずっと在ります。そういったobjectです。
3/2
現れる幻想物理 理科の花 風信子には水のたましい
3/1
街の変形
変質する空間 を 設計する拍動
重力と物体が混ざるんだ 一瞬の渦で止める
青青青青のグレーが交差の本性だ
硝子の鏡がつらだ
眼を見張るほど美しい
夜と時間の秒と停止だ
2/28
感情のエッセンス光りより速し切り裂けば心臓に達する
2/27
そわそわと静脈血の青い心臓
2/26
土日祝休みの日より平日が一等いいね僕らの街は
2/25
この街が舞台で月がないときは
客席からそろそろと人が下がり
空っぽになった歩道に置かれた
自転車の籠の空き缶に止まる虫
彼がおそらく主役になって飛ぶ
こっそり星々が翅を透かしてる
僕はチケット代が惜しくてただ
じっとしていたからみれたんだ
2/24
湿度のない風と寒さを予感して布団でぬくむ春を間近に
2/23
雪がふく散歩帰りに季節ってこうだなと思う布団のぬくみ
2/22
蛍石が海の色です 翠 空に透かすと未知のあおいろ
2/21
てのひら舞台
天球を
実験教室で読む
戯曲は言葉がひどく
下手に感じて好ましい
異星語の翻訳みたい
天使が人を諭す
みたい
2/20
幾種もの鳥行き返す川沿いの ひかり ひかりこまかに空に帰すまで
2/19
布団の上に天窓があり開けた時 たまたまゆっくり月が横切る
凸凹とした月の表面がぬるりと横切る 薄く黄ばんで少し光る
この天窓は何処へまでともなく続いているのか 足元も揺らぐ
また漠然とした恐怖に飲まれる前に寝てしまう 今日も春の夜
2/18
寒風に揉まれ歩いてみる夜半
2/17
今日の一枚
例年通り春に慄いている。夜まで滑らかなこの空気を、痛むような気持ちで味わう。
なぜ、
ゆっくりと渡る大型船はぬるい空気を左右に裂く。双見只夫は言葉だけが異様に鋭くキララカになった異形の魔を見る。タロットカードの背面にそれは立ち上がり、ぐるぐるとかき混ぜるうちに現れる。全ての感情は赦される。佐宗に頼んでみるか、船を沈めてくれ。剣でできた鳥籠に卵が眠ってる。特殊な絵柄のカードで悲痛さが伝わる。ソードのスートは悲劇的で、作家は他人の悲劇を好むので、俺は多くの作家が嫌いだ。自分の痛みだけが痛みだ。自分の痛みを痛んでいる者の言葉しか信じられない。狭量。佐宗が聞いたら笑うな。8本の剣は狭量それ自体で、そろそろ他者への視点を大きく変える時だろう。
どうして、
怖いんだよ春が。
他人の痛みを痛むことができるか?
美しく散らばる硝子の破片を一緒に踏んでくれ
別に誰も傷つけたくないが、と、気分が薄黒く傾く
無性生殖で増えまくるアメーバみたいに諧謔的に
みんながママの胸に帰るまで祈る
2/16
私は人々がいなくなってその場に居残ったり、逆に私だけいなくなることになったとき、いつも選べなかったと回転する。決して傷つかない未熟な心がほしいと幻想する人々は繰り返しうつしみする。絶対にありえないので哀しくて笑った。さくらの亡霊がすべてを掻っ攫うまで、春は万華鏡のよう。僕なら俺なら私なら傷つかない?ロングロングケーキみたいなスロウスロウ…恐怖が迫り上がるのを抑えて歩く。吠え狂う犬の日向ぼっこする春。あたたか。
2/16
迫り上がる膨大な数の春の影ぬるりぬるりと僕は怖い
2/15
ぬるぬると立体パズル組み変わり街は秩序をしのばせてゆく
2/14
片翼に母もう片翼に父あらば羽音哀しき倒立の塔
2/13
等身大失いし脳つばさをくれよ
2/12
結晶の深い傷から色のある光が溢れる
2/11
空を編むのが下手な蜘蛛の巣のように電線が張り巡らされる初春まあるい雲がふかっと引っかかる
2/10
保育園のおはなし会
ろうそくが一挺立っている
真っ白い袈裟を着たお坊さんのことを、みんなは巫山戯て白無垢と呼ぶ
今日のお話はなんでしょう。
立方体の話です。
舞台の在る体育館には、たくさんの子どもたちが遊んでいたのに、気づけば僕は一人だった
立方体?
灯は蝋燭だけになり、おはなし会でいつも言われるように、蝋燭の炎は生きていておはなしを聞いているので、じっと聞けば炎も呼応するのだった。
今日のおはなしはもう幾千年煮詰まった密閉空間の繰り返す街の立方体の話です。
白無垢は神様のお嫁に行ったの?あとお坊さんは男が好きってママが言ってたよ。
ちゃんとおはなしを聞きましょうね。
炎が聞いていますよ。
あるいはのの様が。
実は立方体はいくつも在るのですが、これは特にヴィンテージなんです。
この箱の街の、最も見晴らしがよく、陽がよくあたり、風のすきとおった高台には、
墓地があります。
ジッと炎が鳴る。
繰り返し繰り返し、死んだものが最も高く上がるよう、生を這いずり回るように、箱の内部は画策し、壁を高くし、そして時々に嫁を捕る。そう言う機構の箱でした。
私はそれがあまりに哀れだったので、箱の蓋を閉じてしまうことにしました。まだ幼い子どもらは、可哀想なので雲の上に上がってもらいました。今でも空で時々は、きものが虹色に閃きます。
僕知ってるよ、それって彩雲って言うんだ。科学だよ。
立方体ですからね。空想科学です。つまり魂の色なんです。
それがこの立方体です
つ、と
目の前に真っ黒い箱が置かれる
蝋燭の火は煌々とし
白無垢のつるりとした泥眼のような顔
しかし確かに低い男の声で言う
君も空に上がりますか?
僕は、蝋燭を蹴倒して泣いた。
白無垢は笑いながら体育館のカーテンを開けてゆく。柔らかな夕日が差し込み、箱は方眼紙とホッチキスで作られたペラペラだった。蝋燭の火は消え、暖かな埃の匂い。
白無垢は、のの様は優しい少女の心を持っています。だからイタズラにも寛容ですが、甘ったれてはいけません。遊んでくれなくなりますよ。ずっとのの様と遊びたいでしょう?と言った。
今日のおはなしは特別です。
僕は白無垢にしがみついて、とても安心したけれど腹が立って泣いた。腹が立って腹が立って腹が立って、泣いた。
でもまたおはなしして欲しい。
白無垢は気づいたように、またおはなししましょうね、と言った。
2/9
蝋燭の一挺灯るおはなしの闇夜は声をひたひた落とす
2/9
いま淵を横切ってゆく鵺の眼にさくらの亡霊降りそそぐ予期
2/8
じっと布団の中でぬるい強風の流れが波のようだった、誰の目にも明らかに半透明のひらひらした亡霊。何かが怖くてたまらない。また失うのだろうか。
強く抱きしめたら満開のあの小花となって弾けて溢れた。僕はどうして失ってばかりなのですか?
ぬるぬると空気が鼻腔を抜ける。甘い、甘い、無性に助けが欲しくなる。虫のように丸くなって深く息をする。なぜ?昔からそう。
風の吹く音に、過去が無限にあるのならその音が吸い込んでいる過去、無数に繰り返す春春春を踏んで、くるりと夜に姿を変えるあの薄桃の亡霊のように、僕は死人になるまで未来を掻き分けなければならない。孤独の中に言葉が生まれるのは本当か。そんなことより助けが欲しい。
沸々と浮上する情けなさが、不器用な真っ白い文字列と、容赦ない季節の巡りが、恐怖に青黒く罅いる。助けてくれ!足元から砂のように崩れてゆく感覚のする変わり目、僕はどうしてこのぬるい強風の音に耐えなければならないのですか?
詩人は死人か 水仙の俯く神社を踊り場に、僕は未来を踏みしめなければならないのに、未だ砂に溺れるようで、うずくまる虫であった。
2/7
ふと春の匂い寝床に風のかげほどささやかにひたひたとくる
2/7
揺籠に美しい花たばねたる乳白のそら青はひとひら
2/6
集合した魂の住宅
天球は
四角い箱とそりが合わない
2/5
ペティナイフ翻しくる少年の蝶は四片に散らばりて青
2/4
ふと夏が楽しみになり笑いけり入道の首掻き切って青
2/4
柔らかに蓋されしそら春寒の河の流れにうかぶひかりよ
2/3
未来都市沈めし未来心臓の波打つ水に氷雨切り入る
2/2
トイ・プーの風にふかれて芝にまみれる
2/1
つまり僕が
海です
皆んなは沈んでください
1/31
未だ街のはらわたでじっと
橋の裏の影に水面はゆれ
ゆらゆらとした紋様
日影と日向のあわいをゆくと
ひかりが目に飛び込む
今日もそらは死に、生きかえる
また新たにマンションが3つ建つ
そのけたたましい音とやわらかな
春にちかしい真昼の陽射し
このうるささと微睡のなかに
ぼくも生まれた
1/30
真冬の万年朗の花の
まぬけな空色と刺激臭が
ふとかるくする身体の
川沿いをまっすぐゆく 広くて
目の界をおおきく超える空は
遠く遠く
どこか海でも行こうか
1/29
芝草にじっと座るとうとうととからだの片面だけあたたかい
1/28
君だけに歌われる君ではない方が君に成り代わる
認知に食い込む言葉を使い
愛されている
愛していると言うのだから
どんな歌も雑音にする鋭く灰色の僕の街
僕の
僕の鵺
1/27
冬の雨と湿度の朝が曇りに降り
静かな平日の図書館にぼくはいて
砕けた音をかすかにきく
重い雨上がりがアロエの果肉のように透明な無味無臭のあの結晶を思い出させた
ずっと透けている
かさなるトレーシングペーパーの底にも
燃えている
1/26
ならされた舞台のような白い空間に
春の初めの匂いの雨がする
上野公園が急にそうなると
ぽつりぽつり
ほんとうに細かい薄桃の幽霊が出る
私はよこたわって
広くしかれた布団のように
空が季節を巡らすのを待つ
1/25
通りすがりの幼子に、からからの芝草を手ずからもらい、それが風でふわふわ飛んでゆくのを、不思議そうに見る大きな瞳を、私も見て、不思議に思う。
1/24
ベランダの真冬は冴えてじっと夜を視る
1/23
からからのしばふおぼろないろあいにつめたいかぜのはるのまじりよ
1/22
反抗期を失いゴシップを舐め
るようになるともう立派な大
人であると黒い紙が届く 美
しい星空の星も無いところを
切り取ったんだ 君宛てだよ
何かかいてみせろ 結婚指輪
を中指にはめて式を挙げよう
1/21
百舌鳥雛子(もずひなこ)
優しい君は残酷で
本当のことを決して言わない
けど本当のことは自分でわかるから
大丈夫
言葉の責任をだれもとりたくないから
だから上手にならなくちゃ
(でもわたし、弁舌逞しい人ってだいきらい)
今日が昨日になる 一昨日になる
昔になる 記憶になる
夢になる 幻になる
ぼくのものでなくなる
虚のように黒い目が僕をみている
言い訳をなで斬りにするまあるい瞳
(わたしを失望させないで)
優しいメゾソプラノが死に
もっと優しいメゾソプラノが生まれ
決して嘘を吐かない
どの角度から見ても完全な球体
空想上の底、地獄の底
ぼくにぼく以上のものを求めて唯一ゆるされる彼女は
まぼろしからやってきた彼女は
じっとぼくを見ている
(わたしがガッカリしたら、あなたも死んでしまうの。生きていたいでしょ?)
そういえばそう
腹に鱗の紋を持ち
さかなの生まれ雌の雛
羽ばたき軽く小さくも
猛禽類の系譜なり
肉を喰らわば喰われるは
畜生普遍のことわりか
そう
1/20
ざりざりと滲みる風を浴びる
硬直した臆病を全て捨てた日記から拾う
水の記憶に巻き込まれてゆく
冷たい曇天に 水仙の俯く神社で
じっと 虫のようにうずくまって
訪れを待っていた 空白
1/19
あたたかな獣にでこぼこと背骨が浮いている
君が死んで骨になったら大きな大きなギロになるねえ ぼく君を背負ってギロ奏者になるよ
(獣は、君が死んでも私は何にもならないと思う)
背骨の浮いた毛皮をゆらゆらと撫でる
昼は夜行の獣を背負い夜は獣の背で眠り
昼夜とどまらず旅をゆく
視点を加えるのは破壊行為だから、遠く遠くずっと遠くに投げる
遠く、遠く
(言うべきでないことを言うか言うべきことを言わないか)
起きたら眠る獣を背負い知らない土を踏んでいる
今日はどこへ行こう
神社の境内の花のない藤棚の木漏れ日に
ゆらゆら毛皮を撫でながらゆく
1/18
階段を下る浮遊感で
ひらっと白い裂け目が見えたんだ
おそらく人がまじりあう余地を探してる
(つねに終わりを思うのなら保身がすぎる)
うつくしいさけめ
不安なんだ このまま…
停止している球体
(僕は善くない)
広がりをもたないこの
箱
白かった
人間の余地
未来のうつくしい余地
君の心をサンプルして 少女をつくりたいな
(善くない)
自然風景のような
空白と未知のさけめ
階段を すべりおちてしまいそうだった
1/17
帰路
電車の窓に映る人々の
影のような形のような
これが日々関心を持ち合い
また無関心に
離れたり結びついたりを繰り返すことは
途方もないことだ
信じられないことだ
昔からある小さな家の
さざんかに
ゆらぐ子供の影をみる
(私と氷の板を踏んでください)
恐ろしいことだ
懐かしいことだ
1/16
暖冬か春のひらきか野花の芽
1/15
精神の淵から転げる
一分一秒が硝子の粉だった
僕が硝子の粉をのんでいたとき
それでも雲はいまのように帯状に開いていたのでしょうか?
ナイフの審美眼は両刃
強く握る
神様、吸い込むごとに、死のようだった日に
どうして海は美しかったのですか?
太陽が真正面から影を碧くし
それでも肺はズタズタだった
まるでいまのような
風のよい日に
1/15
wheel of fortune
先へ先へ冷えた日向の街を歩く
長いこと歩いて芝生まで
ミミズと太陽の撹乱
剥き出しでばたつくから目を逸らせない
僕らはいつでも眼だった 轢かれるなと
声をどう使うか試されて失敗するんだ
回転する、大きな雲をまきこんで空を
音もなく、色もなく、輪郭だけ透けた
あの輪には未来しかなくあとはぺたんこ
とても面白くて怖いね
これが歩くことだろうか
1/14
寒風に平穏無事を託けてどこまでだって飛べる気でいる
1/13
野良猫の翡翠そそげばみちみちた曇りの街の澄み切る空気
1/12
きみの眼がぼくを悲劇にしたことを永劫赦さない花ばたけ
1/11
空白の壁に言葉を撃ち込んで他者が食い込む前に 逃げたい
1/10
世界は美 塔は綺麗 愛されないのはフィクションでしょう
1/9
千切れる雲の発光し
青空に抜けた風はあまく
訥々と冬の深まりに
フィクションは全てをゆるした
1/8
日がさして雲が掛かるを繰りかえすやわらかいひかりやわらかいこころ
1/7
彼を完全にしようとして僕はまるめた
君に影を落とした
人間存在全てにかかる影だった
遠くの空から落ちてきた粒が
つめたくてあまかった
1/6
双見只夫のカード
船の上では双見只夫がカードを捲っている。たった今、月のカードだろうと佐宗善次は思う。この大型船の排水管はあちこち破れがあり、特殊な繊維の編み込まれたガムテープでしょっちゅうぐるぐると巻かなければならない。しかしこんなものが流れ続ける水の圧に耐えられるわけもないので、また破れ、巻き直しをされる。それの繰り返し。淡々と迷路のような排水管の破れを塞ぐ。今朝船に乗る前双見が引いたカードは節制だった。カップは感情をあらわしている。節制、不摂生、感情、水。ひょっとしたらこの排水は人々の愛なのかもしれないと佐宗は思った。崩壊する塔のように愛が船を沈めてしまったら綺麗だろうか?双見のカードは今カップのペイジを捲っている。人間は小さな魚と話す為に足を捨てるか?佐宗善次はガムテープを巻きながら、人間には幻滅するが、人間の文化は素晴らしいという言説は虚しいなと前々から思っていることをまた思う。まるで干渉し合わない揺れるか回転するオブジェが無数に立ち並ぶ広大な空間だ。つまりガラスのボートなら濡れずに快適でなんでも見えるというわけだ。人々の愛が流れている排水は海に還り、そして人々はまた水を必要とする。今もこの船は海の上を面白くバランスを崩しながら静かに進み続けているらしい。
カードは今世界だろうか。それとも塔だろうか。
(人間ごと打ち砕かないようにと)
排水音が響く。そんな話を船から降りたらしようと佐宗は思う。
1/5
枯れ草や灰とベージュの細やかさ
1/4
糜爛する皮膚のように眩く開かれた薔薇の言葉を聞け雨に撃たれろ 心臓を差し出せ
1/3
冬生まれの九つ下の少年が胎内回帰ぼくのママです
佐宗善次のこと
ああいい青空だ
ありがとうお母さん
僕は日長石へと還ります
奇術師たらん僕の指へ
新春祝賀を嵌め込んで
テレビジョンのコメディを
万華鏡のように砕いて飾り
しまいには消してしまう
(牙を剥く言葉の城で)
チンドン屋とハーモニカ
(引く気はない)
不死の人形も発現間近
ともだちさ君も君も君も
魂をサンプルするミキサーにかけよう
宇宙には太陽が幾つもあるなんて嘘だね?
唯一絶対に愛しているこの星は
ちりちりと眩い悪意もこの星の思春期だから
空を覆うほど巨大な客船の水道管の修理を
延々と続ける男が僕の(佐宗善次)
彼の魂は心臓になってしまい
サンプルできないくらい硬い
残念だね
夜が明けたら恨みを買わず
ペティナイフをしのばせて
展望を切り取れ
1/2
寝て起きて寝て起きてする年始かな
2025/01/01
つよい風と波の音がまじる曇り空のくものかさなりとサンダルの翼が落下して海にふかく潜りまたそらへ上がったとき僕は地面をとつとつと歩きはじめた
神話を更新
風でおおきくすべる
すべり進む
海の上ははるか
のぞみはちいさく
ちいさく あかりの灯り
12/31
柴と子のたわむれており散歩道
12/30
工事止み住宅街の静けさや
12/29
門松のつぎつぎに立ち日暮れ前
12/28
オリオンの微かに見えし年の暮れ
12/27
夜道冷え住宅街と細い月
12/26
きみの眼を魔法にしたら ふわ
と 天使おりくるきょうの夜中は
12/25
ふかふかとごろ寝しておりクリスマス
12/24
飛行機のぽつりぽつりと夜のそら
12/23
空白の空白の空白の
空白の闇に星座が幾
つも幾つも連なって
ゆくそらと君が空間
にとけてもちゃんと
分かるように空気は
冷えびえとして軋む
12/22
こきゅう
とてもすきなひんやりとした
みずのようなかわのような
ふゆのきがそよそよと
くさぼをなでて わたしも
やわらかなくさぼをつかみ
じっとからだをひにあてて
すいこむ なじむ
はきだす ここにいる
12/21
冬 循環
鳥の群れが川面を啄んで
一重の薔薇が野茨に還る
ゆらゆらのぼやけた草ぼ
影も吹かれてゆれ
刷毛でさらさらはかれた雲と水色
おおきくゆっくりとまわる陽
12/20
太陽は放射状にふりそそぎ
冬の淡い入道雲と波立つ川
鉄塔と橋の深い影
ひんやりと眩しい
12/19
短日 一日中寝たのはいつぶりだろう
12/18
散歩 2
冬枯れの庭草は背が高くぼやけた桃色、淡い茶とベージュ、緑、ぽつぽつと黒
雲の上のように静かな色彩
寒風が知らぬ間に喉を掻き切ってしまった
(でももう随分前から、お前は死んでいただろう?)
(また風のように吹き返すさ)
ぼくはこの庭を巡りながらずっと待っている
(季節と命の混じり合い、据えがたい夢のようなもの)
まだ没入がたりない
モニターのノイズのような川面も心象に取り込みつつある
陽の光と水のちらちらとした混合よ
仮象うつくし道草の行く先
12/17
歩みの遅い少年の五月よりゆく靴碧し
12/16
寝起き
不確かに揺らぐ状況だった
そんな気がする
水から上がった焼死体が
深海の溶岩について少しだけ触れて
火の祈りと満足そうな死
(逃げ癖がついているんだ)
暗闇に穿たれた針の穴のようなひかりに向かって転がり続ける目玉は盲目なのか
死にたいと思ったことがない、君の気持ちがわからない
ただ夢には産声から断末魔まで余さず死とあった
最近朝一番に思いつくんだ
交換しよう、寒風に
(夢でものを食べると夢に取り込まれるという)
ことばをのせておくから
12/15
あさひぽとぽとたたみのひかり
12/14
チリチリと燃える雲間は獣の眼
蛋白石の精神の揺れ
12/13
伝達
おおきく弧を描いて点のからだ
心臓の搏つ空
青い青い青い冬
吸気いっぱい ヘリコプターの音
からっぽで
ねむい
12/12
詩
13画
死神は
詩のカード
とペテン師が
上野公園改札で
ワンコインで占った
12/11
上昇-落下
東京には星がないと
歌うたい達に揶揄われて
カンカンになったその男は
俺が星になると叫びを上げ
観覧車の天辺から
夜空を目指し飛びました
観覧車のガラス窓が
粉々になった欠片一粒一粒に
男の血と目が写り込み
夜の下町に降りました
それが僕の父でした
今もその星を探しています
12/10
結晶石の落涙で傷がきらきらと
大きな川の水面のように
こまかな光できらきらとさざめいたんだ
人類のいたみが溢れおちて
また共有する一滴の
懐かしいいたみ
うまれてきた
ポツとした雨つぶのように
空から切り離されたそのときの
懐かしいいたみ
寒風よあさいみどりの香のあまさ
てのひらのひだまりじわとあたたかし
12/9
感性からたましいへ吹く風さむし
12/8
あざやかなきいばはらはらふるひなた
12/7
壺に封印された妖精のはなしを知ってる?
千夜一夜物語だったかな。ちがうかも。
壺の中に入れられて海に沈められた妖精の話だ。彼は最初、自分を助けてくれた人には望むだけの褒美を与えようと思っていたんだ。百年たって、妖精は助けてくれた人に望むだけの褒美と永遠の命を約束しようと思った。三百年たって、褒美と命と彼の大切な人の幸せも約束しようと思った。五百年たってふと何かが変わる。そして、千年たって妖精はこう思ったんだ、自分を助けてくれたその人をまず、一番最初に呪い殺そうってね。
人間の心の動きの面白い話だと思わない?
うろ覚えだよ。
ところでぼくも物語みたいに誰かと話したいな。ひとりごとは少し寂しい。おやすみ。
12/6
ひやひやとくうにすりぬけゆく風の水平線に呼気が応する
12/5
砂の首
目の荒い砂の雲が空を覆うように巨大な月に掛かっている
回転する球体のあれが月だろうか?
居並ぶ影の人々の首を撫で切りにしてゆく
滑らかな断面と崩れ雲に混じる砂の首
画素の低いモノクロ二階調の空
滑らかに切り離される人々の首
12/4
冬にいたる硝子の風の頬を切り
いつでも神は名を残さない
12/3
冬の風だ
雌のミチアのあおいろよ
お前の川も青いのか
陽を照り返す複雑な
川面親しき鈍色の
街は冷えても迷路する
(一生ここから出られないようなそんな
気がして)
凍える風をまっていた
町のぐるりを巡っては
日の落ちかける四時半前
葉のなくなった銀杏の木
神社の長椅子
いつもの藤棚
狛犬の片方だけに陽がさして
(逢魔時の硝子窓だ
ひょっとしたらすべて反転した偽物)
これが切るように冷えるまで
また風をまつ
12/2
塔
螺旋状の外階段をぐるぐると貼り付けた塔を早く、または遅く登る人々の群れを眠っている土鳩は認識していなかった。僕は無性に不安に駆られることを黙り、ありとあらゆる説明が無駄であることを塔はそのまま体現していたので、天辺についた灯が身体を照さなくなる場所まで逃げるしかないことを受け入れた。すべてを許す底抜けに明るい青空を茫然と浴びる僕は点だった。
12/1
しんとはる夜の青から
メッセージは放たれており
必ず私宛てであり私宛てでない
朝になって鉄塔まだらな雲と薄水色の空がちらほら
弱い雨だから傘はいらない
失われるのは忘れたとき
僕は記憶して
僕を記憶して
とても記憶力が弱いから
僕の脳は水か風のようだった
11/30
きらきらの草ぼ喉奥つきりと痛し
11/29
地面から靴の剥がれし冬の空
11/28
君の歌
この世の終わりには一滴の血が輪を作って広がるみたいにだれも何も言わない
心臓だけ忠実に速さを測る
嘘のよう
僕らがこの星の解体工事を見つめていた時大きな人たちはみんな仕事をしていて、もちろん解体工事の人たちも仕事だった
誰でも分かることなので大騒ぎしていたのが君だけだったのを僕は覚えていて、当たり障りのないことを言ったら口をきいてもらえなくなると直感し黙っていた
工事の音は本を読むこともままならない程でもちろんこんな暖かな日でもベランダには出られなかった
オリオン座が昇るころ
(水色深き鬼の目に美文醜人泳ぎきし
眠りは浅く夢惨く轢き潰したる陰鬱よ
空は澄みきり目は冴えて青き虚の凄まじき)
と、声がして、それきり工事は永遠に止んだ
薄曇り 淡い水色の海に 父の骨を捨て ゆく人々の骨を捨て 人格の 精神の構成材料に 聖人たちの心をもち にぶい銀色の球体は 長い列をつくり 祈るように雲をゆく あすもあさっても未来は続く 銀色の球体は くるくるまわってちょっとひかり 慎ましやかにゆく いつか 水色の海から這い出る赤子を 掬いあげる その日まで 静かに祈り 雲をゆく
11/27
空空冴え獣のそらのほの白き
11/26
ダイダラボッチの少女がカシオペヤを頭にかむっていたのでわたしは彼女のつくった大きな湖からじっとそれを眺めていた
天の川から水を取り
彼女は静かに微笑んで森を壊さないようにそっと歩く
カシオペヤも彼女の頭から落ちないようにゆっくりまわる
森が波打つようによるに変わる
11/25
Blue Bajou 植えし小鳥の樹木葬
11/24
寝室がほのぼの明るく暇である
鼻づまりなんとはなしに鼻歌し
風邪ひきの晴れ間に眠し鱗雲
11/23
魂のサンプルを
雲ひとつない秋空に投げる
日陰は冷え
芝生の湿る午前中
大型船が空を渡る
たくさん親子が乗るよ
彼らは手を振らない 遠くをみてる
床に落ちるカーテンの隙間の光のように
まっすぐに
2024/11/22
劫末の銀杏の黄い葉ほの温い
劫初より氷雨の街を散歩中
2024/11/21
散歩-冬
空は白く糜爛し
翼の生えた徒歩靴で
眼を蹴り穿たないと
決めたのだったが
のろのろと日々変形する街を歩く
土鳩がねむってる
鉄琴の音のように街はひえる
2024/11/20
自室
自閉する窓に四方から投げられた光が
硝子を叩き割る
僕以外の全てが消えた世界は
(僕に失望してくれないか?)
風にひんやり小さく靡く
2024/11/19
薔薇
粉々に咲き天高し
2024/11/18
学校
枯れ紫陽花の白骨が
覆い囲っている
さよならやごめんねが
幼子を傷めないように
ふゆの そらにふかれる息吹
注意深くよけた
きらいなたべもののように
また会う日まで
そらは宇宙に繋がり
いつまでもそらなのでした
2024/11/17
玉髄やうつくし鳥の転落死
ふゆのほ
雲間が光をこまかく砕き
銅の炎はしずかに燃える
寒風ゆるく空気を切り
草ぐさも香をひそめる
おおきくとおる よこぎる手
むこうのすけた やまのような
鉄塔よりもやわらいかんせつ
しろいあしおとの
なめらかな歩がくる
2024/11/16
曇天の密閉空間は空咳をとどめ
立ち枯れのアナベルに羽虫が止まる
点のように じっと胸を上下させる
曇天の灰と灰 光のかさなりが
みえてくる
2024/11/15
やまびこやバカヤローにはバカヤロー
2024/11/14
うつくしい花
薄黒いフロリバンダ
冬咲きの女?近づかないとわからないが
近づくのは怖い
水墨画の花茎
(僕の審美眼は死んでいる)
空は青ぐろく点々と光るものがある
認識はできる
mind murder?
自分を省みられるうちは大丈夫
(嘘)
サキノハカだろうか
そうかもしれない
2024/11/13
terraはさらさらと梨花春雨
薄灰色の建物の群れがこごり
濡れこぼれおちくずれる街
キチョウふわふわと瓦礫の隙間へひそみ
霧さすプリズムをみていた
キチョウの脳にひびくゆめは
どこかの眼のうえをすべる
2024/11/12
十月十三日の夜
高速道を流れる車を眺めながら
いくつかの文を没にした
ひろく大きい空の二、三の星から
この星に初めて来た人みたいに
安定の上にある薄い儚さに乗るでもない
頭から転がるような心細さを握る
痛みの箱だ
自分の得意分野がレバーロックナイフみたいだった
飛び出す刃に光を切って外階段の天辺から
投げるんだ
散歩
徒歩 露出土に青い花房
ヒヤシンスの球根を植えた人の
(魂のお家にしよう)
手の中で
粉々に砕ける枯れ草の
風にとられて飛んでゆく
点描のしずかさ
(いつかの日などない空間)
雲間 のこのこと歩いてゆく
2024/11/11
そらと話した
今日の手漉きの紙の文字が
たかい鳴音になって
遠くの風に吸われる
糸のような細い草の
日差しと影のゆらゆら
書いてあったのは
あいさつの練習と
ちょっとしたたべものや
日の入りの絵
黒くちぢれて雲に混ざり
吸って吐かれた呼気に
水平線が応する
地面にとまる小灰蝶を踏み
あ と思う
金木犀のにおいがして
まばらな木陰が揺れ
くしゃとした足の触り
風はとどまることをしらないから
すぐ洗い流される
うまく飛べないな
僕はずっと紐のない風船でなにもかも風次第だった
この星の
重力が疎ましくてたまらないときもある
小灰蝶の想念
翅はいらない
硝子細工を組みあげる手先と
正三角の粒は縹渺と明度を増す
深く切るように秋にいる
2024/11/9
2024/11/8